Radio80(岐阜エフエム)はなぜ“神”なのか…民放ラジオ空白地帯を救った存在

岐阜県飛騨地区で有名な観光地高山。たくさんの観光客が訪れます

高山へ向かう道中で見えた送信所

先日、仕事で高山へ車で行く用事がありまして、東海北陸自動車道で向かうことにしました。名神高速、一宮JCTから東海北陸道に入り、少しするとAMラジオの送信所が現れました。大きさはちょっと小ぶりでしたが、比較的新しそうで、場所が川島町だったため、CBCラジオの岐阜中継局(639kHz 500w)だとすぐにわかりました。

出力は500wですが、周波数が低くまた、河川敷付近でアースも良好なせいなのか、10倍の出力である岐阜放送の本局(1431kHz 5kw)よりも広い範囲で聞こえるような気がします。

郡上で消える民放ラジオ

さて、東海ラジオの名古屋本局を聞きながら美濃ICを越え、美並村に入ると、だんだんと雑音が多くなってきました。すると、高速道路にしては珍しく、ラジオの周波数案内が登場しました。「NHK第一846kHz、NHK第二1521kHz」と書いてあるのですが、民放の表示がありません。

「なんだ、不親切だなぁ。」

と思い、カーラジオをサーチしてみても、NHK以外は選局できません。このNHKの周波数は郡上八幡中継局なのですが、実は、民放AM局はこの郡上八幡に中継局を設置していないのです。八幡町にさしかかると、CBC、東海ラジオの名古屋本局、CBCの岐阜局、岐阜ラジオの岐阜本局、全滅です。

民放AMの入らない郡上八幡こちらも有名な観光地

観光ルートなのに中継局がない理由

この東海北陸自動車道は、郡上八幡を通り、別荘地ひるがの高原のある高鷲村、高山祭りで有名な飛騨高山のおとなり清見村、更にその先は一部まだ建設中ですが、世界遺産白川郷を通って富山県に抜けるルートを走っていて、観光地をつなぐ高速道路となっています。

岐阜県のAM送信所マップ高速道路沿いには民放が無い…

ところが、地図を見ていただくとおわかりになると思いますが、民放AM局の中継局は、この郡上八幡から先には存在しません。ちなみにNHKについては、郡上八幡局が聞こえなくなる辺りから、1kwの高山局を聞くことができます。しかし、民放の高山局は100wのため、高山に最も近い清美IC付近でも良好に受信することはできません。

民放AM局の中継局配置

岐阜市の岐阜放送本社3階建てすぐ横に岐阜新聞

民放AM局は、岐阜県内にどのように中継局を配置しているのでしょうか。まず、CBC、東海ラジオ、岐阜ラジオともに設置しているのが、高山、中津川・恵那、下呂・萩原、神岡となっています。高山は飛騨の中心都市であり、開局すぐから設置されているのですが、前述のとおり、なぜかNHKの1/10の出力で、カバーエリアは狭くなっています。

中津川・恵那は比較的人口の多い東濃地区をカバーし、下呂は温泉があり古くから観光地として栄えている街です。そして神岡は、ノーベル賞小柴さんでお馴染みの研究施設、スーパーカミオカンデで有名ですが、そのお陰で財政の潤った(?)町が、予算を付けて中継局を誘致したという経緯があります。

他には、岐阜放送が岐阜市本局と多治見に中継局を、CBCが単独で川島町に岐阜中継局を設置しています。しかし、加えてNHKは、郡上八幡と白鳥にも中継局を設置しているのです。

NHKだけが届くエリア

このように、徹夜で踊る郡上踊りで有名な郡上八幡、名古屋の別荘地として名高い、ひるがの高原のある高鷲村、こういった地域ではNHK第一、第二、NHKFMがラジオの全てであり、民放というものは存在しないも同然でした。たぶん、観光地といっても人口が少なく、送信所を建てるほどの広告効果がないと判断されてしまったのであって、建てるお金がないという理由ではないでしょう。

実際、CBCが岐阜中継局を建設したのは、ここ数年前のことです。岐阜市付近では、昼間は良好にCBC本局が受信できるのですが、夜になると大陸の電波が混信するために、ダブルサービスになるものの、中継局を建設したのです。

岐阜市周辺における夜間のみの広告効果のほうが、郡上八幡周辺全体の広告効果よりも大きかったのでしょう。やはり民放とはそういうものです。

Radio80の登場

ところがです。休憩に立ち寄ったひるがの高原SAに入るとラジオが流れていました。

「ん?どこの局だろう、この辺りにコミュニティFMなんかあったかな?」

それは、盲点でした。岐阜の県域FM局のRadio80でした。Radio80は、この民放が今まで全く無かったも同然の、郡上八幡に中継局を設置しているのです。つまり、このエリアでは、2001(H13)年になってはじめて、民放ラジオが登場したのです。

Radio80の番組表とステッカー

FM局の強み

FM局というのは、AM局よりも中継局建設が楽にできます。AM局は広大な敷地を確保しなければなりませんが、FM局は、AMよりもアンテナが小さく、他局の送信設備を間借りすることができるので土地を購入しなくとも、設置することが可能です。Radio80の多くの中継局は、NHK-FMのものを間借りしているところが多く、比較的少ない設備投資で、中継局を設置できたのだと思われます。

52年遅れの民放ラジオ

しかし、冷静に考えるとすごいことですよね。名古屋・中部日本放送(CBC)が、日本で初めての民間放送として、本放送を開始したのが1951(S26)年9月1日、もうそれから52年もの月日が流れようとしています。そのCBCのエリア内でありながら、中継局が建設されなかったために、民放ラジオを聞けなかった、このエリア。

地元重視のはずの県域局、岐阜ラジオさえも中継局を建設せぬまま、21世紀を迎え、ようやく始めての民間放送ラジオというものに触れることができたというわけです。(テレビは昔からありますよ)ラジオはNHK、という常識をくつがえしたRadio80岐阜エフエム。このエリアでは存在価値が大きく、愛聴されることでしょう。

リゾート放送局という発想

どうです?思いきって、本社をひるがの高原や、郡上八幡、もしくは高山あたりにでも移して、「リゾート放送局」とするのはどうでしょう。ネット保証金がもらえるから、JFNネットからの離脱は無理でしょうけど、そういった差別化が、Radio80には求められているんじゃないですかね。面白味があります。

岐阜メディアの裏事情

そういえば、岐阜県にエフエム局が割当てられた当時、別の会社(エフエム岐阜アーバニズム)が、計画を立てたときは、芸能人を呼びやすく、新幹線の駅がある羽島市に本社を置き、独立局とする、なんて夢のような案だったけど、これはたぶん実現していても、後々、神戸の局のようにお金の問題で、JFN加入になっていたでしょうね。

しかし、もっと早く開局していれば…。もっと存在感が…。そんなことを今言っても仕方ありませんが、それもこれも中日新聞vs岐阜新聞の戦いに巻き込まれちゃったから…ズルズルと遅くなってしまったわけで。

そんなRadio80には「岐阜新聞ニュース」と「中日新聞ニュース」があります。時間帯ごとにキッチリとわかれていています。

新聞社の対立と放送文化

岐阜新聞と中日新聞は事あるごとに対立してきました。例えば、純粋な岐阜新聞資本である岐阜放送では、プロ野球の結果も「ドラゴンズ」と言い、「中日」とは絶対に言いません。また、岐阜市で中日花火大会が開催される日は、岐阜放送では「花火」の「は」の字も言ってはいけないという噂です。その中日花火の影響で、道路が混むとかそういう予想があっても言いません。「イベント」と言い換えます。その日、花火の話題は厳禁なのです。

なぜならちょうど1週間後が、岐阜新聞花火大会だからあり、しかも同じ場所で開催するからです。さらに、岐阜新聞花火大会の日は、隣の大垣市で中日が花火大会を行い、それは岐阜新聞花火大会の会場からも見えるという…。花火ひとつとっても、ものすごい戦いが繰り広げられているのです。

こういった事情を知っていると、岐阜放送で流れるトヨタカローラ岐阜などのCMで、

「詳しくは明日の中日新聞朝刊…。」

なんてセリフが聞こえてくるだけでも、聞いてるコチラがビクッ!としてしまいます。余計なお世話ですが。

放送中のヒヤッとする一瞬

先日、Radio80で、さらにビクッ!びくっ!とすることがありました。

「中日しんぶ…(しばらく空白)……岐阜新聞ニュース&ウェザー。この時間は…。」

ギョエー、岐阜新聞と言うべきところを、中日だなんて。なんと恐ろしいことを。このDJ、来週いるかな…。

この記事を書いた人

TOPPY/川合登志和

記事や脚本を書いたり、名古屋のラジオやテレビの構成作家をしたり出演したり、地域のFMラジオで喋ったりディレクターしたりミキサーしたり、講師したり、サイト作ったりしてます。

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