「叙情都市 名古屋」を読んで

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写真:「叙情都市名古屋-木村一成写真集」(歴遊舎)

「21世紀総天然色の名古屋を永久保存!」というキャッチフレーズで制作された、「叙情都市 名古屋-木村一成写真集」がいよいよ発刊されまして、さっそく、拝読させていただきました。これほどまでに、生きている名古屋を、写真から感じることができるのか…と思わせてくれるものでした。

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いわゆる、他の地方の人が「名古屋」と聞いて、パッと思い浮かべるような写真ではありません。どちらかというと、名古屋の人々でさえも、あまり気に留めてこなかった視点での写真と言えるのかもしれません。

ところがです。だからこそ、リアリティのある名古屋といいますか、本当に、ふらっとあてもなく名古屋をぶらぶらと歩いているような、そんな気になってしまう、一冊に仕上がっています。

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ふと、東京を一人で歩いていると、ものすごい孤独感に襲われることがあります。たくさんの人が行き交っているのに、街は光であふれているのに、なぜか寂しく、不安になることがあります。ところが、名古屋を一人で歩いていても、寂しさや不安に襲われることは全くありません。

私はずっと、それがなぜなのかを考えてきました。名古屋で生まれたから?名古屋は田舎だから?名古屋は勝手知ったる街だから?

でも、この写真集を読ませていただいたことで、その答えに一歩近づいた気がするのです。21世紀に入り、名古屋も変わっています。超高層ビルに高速道路、その様子だけ見れば、もうすっかり名古屋は、近未来的な大都市になりつつあることに間違いはありません。

しかしです。ずっと変わらない「名古屋」があるのだと、気づかされました。名古屋の人々の包容力といいますか、変わることを拒むわけじゃないけれども、先を急がない、まさに、この写真集のキーワードになっている「安気さ」が、すごく重要なことなんだな…と。

この名古屋という街で生まれ、その街の周りで暮らしていることが、なんと贅沢なことで、なんと幸せなことであるのかを、実感できました。とんでもなく目新しいことが起きるわけでも、つねに先頭を走っているわけでも、刺激のある毎日がやってくるわけでもないけれど、人と人とが、見えない糸で思いの外繋がっていて、ゆったりのんびり毎日を過ごすことができて、なおかつ、街の風景から常に、過去と未来とを見渡すことができ、自分の立ち位置がはっきりとわかる。

だから、寂しくもならないし、不安にもならない。名古屋は温かい。そんな、リアルな名古屋が本当に良く出ている写真集です。しかも、それぞれの写真に、その背景にあるものがキャプションとして加えられているので、ぐっと深みが増しています。

名古屋在住の方、名古屋好きな方にはもちろん、名古屋に興味の無い方にこそ、ぜひとも手にとってご覧いただきたい一冊です。

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