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岐阜エフエム放送が解散・岐阜の対立の構図が招いた結末

      2015/06/23

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岐阜エフエム放送・Radio80(岐阜・大垣市)

債務超過解消の見通し立たず

 岐阜県で唯一の県域FMラジオ放送局、「Radio80(レディオエイティー)」の愛称で放送を行ってきた、岐阜エフエム放送株式会社が年度末の3月31日をもって会社を解散・清算することとなった。しかし、放送局がなくなるわけではなく、新たに設立された「エフエム岐阜」という新会社に放送免許が継承され、放送自体は4月1日からも続くこととなる。この背景には、岐阜エフエム放送の債務超過解消の見通しが立たなかったことが理由として挙がっている。それにしても、名古屋近郊で同じような立ち位置にある三重県の放送局が元気であるのに対して、岐阜県の放送局はこの県域FMの解散をはじめ明るい話を聞かない、この岐阜と三重の差は何なのだろうか。

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岐阜エフエム放送が誕生した背景

 岐阜エフエム放送が開局したのは、2001(H13)年4月1日。これは、現在わが国にある地上波の県域放送局のなかで、最も遅い開局となっている。21世紀になってから開局した唯一の地上波民間放送局でもある。対して、三重県の三重エフエム放送(レディオキューブFM三重)は、1985(S60)年に開局しており、名古屋のZIP-FMの1993(H5)年と比べても早い。実際、ZIP-FMが開局する前は、名古屋でもFM三重は東海地区第2のFM局として広く聞かれており、当時からのリスナーが現在も支えている。

 岐阜と三重の大きな違いは2つある。まずは、岐阜にはAMラジオ局があるということ。岐阜には岐阜放送によるAMラジオ局「ぎふチャンラジオ」があるのに対し、三重県は以前の近畿東海放送が名古屋に移転して東海ラジオとなって以来、AMラジオは名古屋か大阪のものが聞かれているが、三重県にはAMラジオ局が無い。そのため、三重にはFM局の開設も早く、経営も安定しているのである。

 そしてもうひとつが、新聞社の対立である。三重県のメディアは、三重テレビ放送も三重エフエム放送も、事実上、名古屋の中日新聞資本であるのに対し、岐阜県のメディアは岐阜新聞の子会社岐阜放送だけ、という時代が長く続いた。岐阜放送はAMラジオとテレビを抱え、岐阜県の放送メディアはずっと全て岐阜新聞が単独で押さえていたのである。

 ここに「岐阜県にも県域FMを」という声があがる。岐阜県にはAMラジオ局があったために、その経営に配慮する意図もあり、郵政省(当時)は岐阜県への県域FM局の電波割当を渋っていたのだが、民放FM局を全都道府県に設置する方向へと舵を切る。そして岐阜県には、80.0MHzという電波が割り当てられるのである。

 この電波を巡って当然、対立が起きた。岐阜新聞は、岐阜放送のテレビスタジオの入口横に「FM準備室」を設置。そして「FMまでも岐阜新聞に支配されてたまるか」と、中日新聞も動く。さらに、羽島市にスタジオを置くことで新幹線でタレントを呼べるとして、岐阜のFMはTOKYO FMの系列局ではなく、関東のナックファイブやFM YOKOHAMA、Bayfmのように独立局としての開設を狙う勢力も現れ、その綱引きによって開局はどんどん遅れていったのである。

 その間に、岐阜県内では先に、市町村単位で放送を行う規模の小さなコミュニティFMが開局を果たす。高山市のHits FMが1997(H9)年に、多治見市のFM PiPIが1998(H10)年に開局し、これらの地域では、県域よりも先にコミュニティFMが開設されたことで、現在でもコミュニティFMの方が認知度が高い状態のままと言われている。

 複数の名乗りを一本化する調整が何とか形になり、結果として中日新聞と岐阜新聞がそれぞれ4,950万円を出資することで、両社の合弁企業として岐阜エフエム放送株式会社が誕生。21世紀になってようやく、2001(H13)年4月に開局を果たすのである。

岐阜をカバーする大変さと債務超過

 岐阜県は山に囲まれた山岳県で、実は岐阜放送のAMラジオも、名古屋のCBCラジオや東海ラジオも、完全にカバーしているとは言えない。特に郡上八幡には、NHKはラジオの中継局を設置しているにもかかわらず、どの民放ラジオ局も中継局を設置していない。しかし、岐阜FMは県内くまなくカバーするため、この郡上八幡を含めて7局の電波送信所を設置。後発で収益も少ないFMラジオ局にとって、この設備投資は大きな足かせとなった。

 中日新聞や岐阜新聞と同様に、岐阜県の県民の税金からは4,950万円が、さらに、本社を置く大垣市からは1,000万円が岐阜エフエム放送に出資され、払込資本金は4億9,500万円となったが、あっという間に資本を使い果たし、会社は債務超過状態に陥ってしまう。

 ちょうどこの時期、新聞社などが複数の放送局を支配する「マスメディア集中排除原則」に反している放送局が次々と発覚。その際にFM三重は筆頭株主が中日新聞社から北海道新聞社へと変更に。実はこの岐阜FMについて、中日新聞、岐阜新聞ともに支配に該当し、行政指導を受けている。現在はこの原則は緩和され、同一エリアで4局まで出資できることになっているが、新会社に両紙が出資するかどうかは不透明だ。

 さらに、ラジオをインターネットでも聞けるサービス「radiko(ラジコ)」が東海地区でもスタートするのだが、このサービスに参加するためには、毎月の利用料および、放送局によるラジコへの出資が必要となった。債務超過状態の岐阜FMが他社に出資などできず、不参加となってしまったことも、より、リスナーの間口を狭める結果となっていた。

単黒が出ているのに?出ているからこそ

 そして昨年10月、岐阜エフエム放送の会社解散、清算が臨時株主総会によって特別決議された。私はこの時点で関係筋からその話を聞いたのだが、ここ5年は単年度黒字を出しており好転に向かっているものの、現状のままでは債務超過解消までの道筋を見出すことは出来ず、新会社への事業譲渡という形を取るしか、生き残りの道は無かったということになる。

 新聞報道によると、既に昨年8月にはTOKYO FMとFM AICHI、そしてそのネットワークであるジャパンエフエムネットワーク(JFN)の3社が共同出資をして新会社「エフエム岐阜」を設立。現在の岐阜エフエムが清算され、4月1日からは新会社「エフエム岐阜」が放送を開始することになる。

 従業員やスタジオ、設備はそのまま。ただし、債務超過は解消されて、単年度黒字が出れば、ちゃんとまわるようになるということ。過去にも兵庫県のKiss FM KOBE、福岡県のcross fmが同様の方法で放送を継続している。

 清算される岐阜エフエムへの岐阜県の税金からの出資分、4,950万円は…さようなら。岐阜エフエム放送の放送期間は13年、岐阜県民の人口は約200万人、1人あたり毎年約2円の受信料を岐阜エフエムに払っていたということになるが、まあ、あっちに比べれば安いものである。

新会社の地元感

 新会社の資本は、免許継承の時点では、TOKYO FM、FM AICHI、JFNの3社だが、開局後に第三者割当増資を行い、岐阜県内の企業の資本比率を過半数にしたいとのこと。

 さて、先ほど岐阜新聞の中日新聞の対立という話をしたが、実は岐阜県にはもうひとつの対立がある。それは、岐阜市の政財界と、大垣市を中心とする西濃の政財界の対立。それを象徴するのが、十六銀行と大垣共立銀行のバトルである。ちなみに、大垣共立銀行の本店の建物が17階建てなのは「十六を超える銀行になる」ためだそうだ。

 岐阜エフエムは、大垣市に本社が置かれた。岐阜新聞と中日新聞の綱引きは、合弁という形で引き分けだった一方で、岐阜と西濃の綱引きでは西濃が勝利していたというわけだ。これにカチンときた岐阜市の政財界は、大垣の岐阜エフエムの開局からわずか1年後に株式会社シティエフエム岐阜を設立、すぐさま岐阜市にコミュニティFM局「FMわっち」を開局させている。

 このように、岐阜のメディアというのは、岐阜対名古屋だけでなく、岐阜対西濃という綱引きにも巻き込まれてしまった。かつて幕府の直轄地であった高山や、名古屋のベッドタウンとなっている東濃で先にコミュニティFM局が開局したのは、この綱引きが無かったからの一言に尽きる。

 岐阜で経営悪化というと、FC岐阜を思い浮かべる方もいらっしゃるだろう。実はFC岐阜にも「岐阜市の辺が勝手にやってること」感がずっとあり、岐阜市以外はあまり応援する機運になっていなかったのだが、見かねた県知事が「『オール岐阜』体制で応援しよう!」と呼びかけ、西濃の政財界も腰を上げたことで復活の兆しが見えてきている。

 そしてこの、新会社・エフエム岐阜である。岐阜新聞も中日新聞も出資する意思が無いと一部で報道されたこの新FM局、誰が支えるのか、それは岐阜県民、岐阜県の企業が支えるしかない。どんな岐阜県内企業が出資するのか、注目である。3月31日にこれまでの「Radio80岐阜エフエム」は閉局し、4月1日に「エフエム岐阜」が開局となる。

見た目としては何も変わらないよね

 それにしても、中日新聞も岐阜新聞も、これまでもラジオ欄では「Radio80」でも「岐阜FM」でもなく「FM岐阜」と表記してきたため、新局が「FM岐阜」になっても、何も変わらない感じで、ほとんどの人は会社が変わったことを気づかないだろうね。まあ、変に周知しちゃうと「税金が出資されてたはずのFM局が清算になった責任の所在云々…」なんて話になるから、気づかれない方がいいもんね。

追記:1ヶ月前倒しされ、3月1日に新会社へと免許が承継されることとなりました。

百折不撓―ぎふ財界人列伝 十六銀行

 - メディアの話

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Comment

  1. 犬山市民 says:

    揚げ足取りで申し訳ないのですが、「エフエム岐阜アーバンニズム」ではなくて、「エフエム岐阜アーバンス」です。

    良記事なんですが、ちょっときになったので。失礼しました。

  2. 犬山市民 says:

    訂正します

    エフエム岐阜アーバンニズム→エフエム岐阜アーバニズム

    ごめんなさい。

  3. トッピー says:

    >犬山市民さま コメントありがとうございます。

    「エフエム岐阜アーバニズム」につきましては、
    当時の報道記事をソースとして書いています。

    ひょっとすると、その記事が誤植であったり、
    アーバニズムがアーバンスに改名された経緯があるのかもしれませんが、

    私がソースとして唯一確認しているものが「アーバニズム」でして、
    「アーバンス」という何かソースをお持ちであれば
    教えていただければと思います。

    ただ、現時点では、
    私が持っているソースは「アーバニズム」だけということを
    お伝えさせていただきます。

  4. 犬山市民 says:

    いわゆる身バレをさけたいので、これ以上言えませんが、アーバンスで間違いありません。
    ソースと言われると、私ですが、1992年夏頃のの中日新聞にも記事があるはずですよ。

  5. トッピー says:

    >犬山市民さま コメントありがとうございます。

    ありがとうございます。
    どうも、私が持っている記事の誤植という可能性が高いですね。
    当時の中日新聞記事を確認してみます!

  6. ひーくん says:

    新聞のラジオ欄は、ほとんどの新聞が「FM岐阜」として表記していますが、産経新聞(東海・三重版と北陸版)では愛称の「Radio80」として表記しています。
    民放連に加盟するラジオ局で、平成になって開局した放送局は近年の“ラジオ離れ”で広告収入が底をつく状態で経営が悪化する局が多くあります。名古屋のRADIO-iのように引き取り手がなく閉局する局もあれば、crossfmやKiss-FM KOBEのように新旧分離で存続する局もあれば、福岡のLove-FMのように地元のコミュニティFMを運営していた企業が放送免許を引き継いだ局もあります。大阪のFM COCOLOは開局当初からの運営企業が赤字となって放送免許を同じ大阪のFM802に譲渡し、FM COCOLOは事実上FM802の第2放送扱いになりました。
    東海地区では4月から東京のInterFMが「InterFM NAGOYA」として名古屋に進出しますが、Radio80は新法人の運営のもとで再生されます。
    Radio80の今後に注目してほしいです。

  7. wataru says:

    岐阜FMは経営悪化の理由はラジオ局の多さですね岐阜にはCBCラジオと東海ラジオの中継局そして岐阜放送ラジオそして愛知のFM局が県南で聞ける考えれば無理に岐阜にAM局を作ったのが始まりだと思う佐賀県なんてFM佐賀が開局前はNBCラジオ佐賀は実質NBC長崎放送ラジオの番組の垂れ流しでFM佐賀ができた時にNBC佐賀もFM佐賀に対抗して自社制作番組を増やして福岡県のラジオよりも質のいい番組を作って結果的にコミュニティFMの開局が2010年のFMからつまで遅れたと考えてます

  8. トッピー@管理人 says:

    >ひーくんさま

    Radio80の今後に注目、
    そうですね。また動きがありましたら書きますね。

    >wataruさま
    もともと三重と岐阜にあったAM局が合併して
    名古屋のAM局になってしまったことも、
    遠因としてあるのかもしれませんね。
    まあそれも結局、2つの新聞社の綱引きの産物ですが。

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