エビフリャーな名古屋っ子はもちろん必読・枠にとらわれずにこれからを生きるには…「タモリと戦後ニッポン」
2018/08/25
タモリと戦後ニッポン/近藤正高・著(講談社現代新書)
まったくあたらしいタモリ本とは
「まったくあたらしいタモリ本!」とありますが、このたび発売になった、愛知県出身のフリーライターの近藤正高さん著「タモリと戦後ニッポン」は、タモリ本という枠にとどまらず、戦後史をタモリさんの人生という視点で追うという壮大な構成であり、細かい文字で書かれた参考文献のリストが5ページに渡っているという、資料の膨大さに驚かされます。
もちろん、タモリさんと放送との関わりは、切っても切れない関係ですが、単純にそこだけにとどまりません。タモリさんが少年期にBCL(遠方のラジオ放送を聞いて楽しむ趣味)を趣味とされていたことはよく知られていますが、そのBCLがタモリさんの人生に与えた影響という視点は、放送を趣味とする自分としても、考えさせられました。
名古屋っ子なら誰もが気になる、タモリさんとエビフリャーの関係や、どうしたらタモリさんのように人生を捉えて枠にとらわれず充実した日々を過ごせるか。好きなことで生きていけるか。そしてその行き着く先。これまで語られてきたタモリさん像とは違ったものが背景にあると感じることができる一冊です。
この本は、序章と7つの章、そして終章からなります。
タモリさん人格形成の原点とは
序章でまず驚いたことがあります。名古屋っ子の私としては、タモリさんといえば名古屋を笑いものにするネタ、というイメージがありまして、私はずっとその原点に「福岡」があると思っていたのですが、全く違ったという発見。さらに、名古屋は象徴に過ぎなかったということ。その象徴の代表格こそが名古屋だったわけですね。
第1章でラジオの話が出てくるのですが、ソフトとしてのラジオ番組という見方だけでなく、BCL・放送好き(番組好きではない)としてのラジオ、しかも、タモリさんがそうであったというだけでなく、BCLが芸に与えた影響、芸の素養になったという点は、大いに納得できたとともに、マニアとして吸収したものを、吸収するだけならただそれだけ。それを、どう発信するのかが自分に問われている気がしました。
第2章では、学生時代のタモリさんのエピソードがいくつも出てきます。ページとして割かれている分量は少ないのですが、注目したのはオリンピック。1964(S39)年の東京オリンピックが日本に与えたものと、それに対するタモリさんの思い。「これが、のちの名古屋ネタに響いていたのか!」と感じつつ、それを楽しみに読み進めます。
第3章は、記録のあまり無い、サラリーマン時代のタモリさんを追っているのですが、まさか、あの千日デパートビルや奈良と横浜のドリームランドなどを経営していた、日本ドリーム観光と話が繋がるとは。
第4章、テレビ東京の「タモリの音楽は世界だ」にパネラーとして登場していた、坂田明さんとタモリさんのお付き合いが、それほどまでにルーツとして深いものだったのかと。何も知らずに見ていたんだな…。
また、タモリさんの、30歳という区切りを、それまでに一生の仕事を決めるのではなく、30歳になったら一生やる仕事を探さなければならないという考え方には、大いに共感するとともに、自分の20代の頃に、その言葉を聞きたかったと感じました。
テレビ時代のタモリさんと「名古屋」
第5章はそれまでとちょっと視点が変わり、タモリさんとつながりのある人物や、同時代を駆け抜けた人を通して、70年代後半から80年代初頭にかけての、テレビ界の変容と日本の立ち位置の変化が描かれています。まさに、自分はこの時代のテレビが原点なので、こんな強烈なパワーを幼少期にテレビを通して享受できていたんだなと、実感。
第6章、ここは名古屋っ子として長年「噂には聞いてたけどどうなの?」という話が書かれています。そう、タモリさんと「エビフリャー」です。日本テレビの「今夜は最高」は初回から、名古屋コントだったんですね。これは名古屋っ子としてはほんと、知っておきたいエピソードです。そして、タモリさんが名古屋ネタをフェードアウトしたきっかけは、やっぱり、アレ?というお話も。
そしてこの章では、いよいよ「笑っていいとも!」に迫るのですが、その成り立ちで「東京ホームジョッキー」「レディス4」に触れてあるのが、もう、たまりません。
第7章、本筋とは関係ないのですが、ここで、ウィキペディアにおける放送番組・タレント関連項目の信憑性が取り上げられているのが面白い。そして、「いいとも」が終了したあとのテレビ界についてのタモリさんのコメントも、その根底にBCLがあるという分析が、たまらなく心地よかったです。
終章。文章が残り少なくなっていくなかで、「え?なんか、そんな空気で終わるの?」と思わせたところで、「あー、そういうことか」と腑に落ちます。
70年という時の経過の意味
この感想は、あくまでも、当サイトに共感していただけるであろう方に向けての視点での感想であり、実際には、戦後70年の日本と、タモリさんの人生を重ね合わせ、もっと大局的見地からの一冊であります。
戦後ニッポンが70歳。タモリさんも70歳。これから老後です。読者が私のようにたとえまだ30代でも、これからその「戦後ニッポンとしての老後の世界」のなかで生きていかなければならないということに気づかされます。その生き方のヒントにもなる一冊だと思います。
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Comment
是非ともブラタモリの名古屋篇を制作して欲しいです。