名古屋向けマーケティングで「中京圏」は禁句・使っても損しかない

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損しかしない「中京圏」

 よく、全国区企業が名古屋圏に進出したり、名古屋圏に告知をする際に「中京圏」「中京地区」といった単語を使うことがありますが、この「中京」という言葉は、地元・名古屋では特殊な用途でしか使われない単語であり、使うことで損をする要素は見当たりますが、得する要素は一切見当たりません。

 名古屋圏向けに「中京圏」「中京地区」という単語を使用することで、自らマーケットを狭めることになるのです。その理由を、地元・名古屋圏民目線でお知らせします。ぜひご参考に。

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中部・東海の愛知・名古屋

 そもそも「中京」とは一体何なのでしょうか。辞書を紐解いてみます。大辞泉を調べてみますと…。

《東京と京都との中間の大都市であるところから》名古屋市の異称。

 なんとなく、中京と言うと、名古屋市の周辺を含める印象がありますが、名古屋市の異称でしかないのです。

 ですから、名古屋市民の意識としては、名古屋に住んでいるのであり、中京に住んでいるという意識はありませんし、名古屋市外の人の意識としても、中京=名古屋市ですから、中京に住んでいるという意識はありません。

 つまり、名古屋圏民のなかに「中京に住んでいる」という意識を持っている人は存在しないということになります。

 中部地方のなかにある、東海地方のなかの、愛知県、そのなかの名古屋なのです。

どんな時に誰が「中京」を使うのか

 名古屋市の異称である「中京」。では、どんな時に使用されるのかというと、用例は3パターンです。

その1「名古屋が使えないとき」

 本当は名古屋と言いたいのだけど、何らかの事情で名古屋と言えない時に使われます。たとえば…。

・先に名古屋テレビがあったから中京テレビ
・先に名古屋相互銀行(現・名古屋銀行)があったから中京相互銀行(現・中京銀行)
・先に名古屋高校があったから中京高校
・先に名古屋大学があったから中京大学
・先に名古屋競馬場があったから中京競馬場

 つまり、積極的に中京と名づけたかったわけではなく、名古屋○○が既にあったから、仕方なく中京○○と名乗っているケースが多いのです。

その2「名古屋市外を含めるから有耶無耶にしたい」

 名古屋圏民には、拙著「名古屋あるある」でも多くの人の賛同を得ました「名古屋市外でも名古屋といいがち」という特性があります。名古屋市外在住であっても名古屋に擬態するのが地元民の習性です。

 しかし、中央・東京から名古屋を見たときに、名古屋市外を「名古屋」に含めることに抵抗があるのか、「中京工業地帯」「中京広域圏」「中京圏聴取率調査」といった具合に、本来は名古屋市の異称でしかないにもかかわらず、名古屋市外を含めるものについて「中京」でごかますという使い方をするのです。

 この使い方は、東京や他地方の人が名古屋周辺を指すときに使うケースがほとんどで、地元の名古屋圏民はこのような使い方をしません。なぜなら、名古屋圏民にとっては名古屋市外も名古屋だからです。

その3「名古屋偏重を認めたくない」

 愛知・三重・岐阜の東海3県は、名古屋の支配下にあることは紛れも無い事実なのですが、これを認めたくないという人がいます。それは、愛知県の東半分「三河」、岐阜県の南半分「美濃」、そして三重県民です。

 これらの人々は、名古屋がこの地域を支配していることを認めたくないがために、意図的に「名古屋」という単語を使用しないという特徴をもっており、その代わりに使われるのが「中京」なのです。

 三河出身の愛知県知事が、名古屋市と愛知県を一体化する構想として「中京都」という名を主張していたのに対し、名古屋市長は「尾張名古屋共和国」、名古屋経済界は「グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ(大名古屋経済圏)」を提唱していたことからも、わかります。

 また、美濃は名古屋の支配地域ではなく、岐阜独自文化の地域であるという立ち位置にある岐阜新聞の紙面でも、「中京圏」という単語はよく登場します。

地元民は「中京圏」の範囲を知らない

 このように、名古屋圏民にとって「中京」とはある種の特別な意図をもって使われる単語であり、一般的に「中京圏」「中京地方」という単語を使うことはほぼありません。

 地元マスコミでも、愛知・三重・岐阜の3県をさす場合には「東海地方」「東海地区」「東海3県」「愛三岐(あいさんぎ)」を使うことがほとんどであり、社名で自ら中京と名乗っている中京テレビでさえ、この地方を呼ぶ際は「東海地方」「東海3県」なのです。

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(NHK名古屋のEPGより引用)

 NHKは、この愛知・三重・岐阜の3県に向けたニュース番組のタイトルとして「NHKニュースおはよう東海」「NHKニュース845東海」を長年採用しています。地デジ化によって夕方のニュースが県別になる前は、この3県向けのニュース番組で常に「NHK東海」という表記もしていました。言葉選びの指針となるNHKも、この3県を指す言葉として一貫して「東海」を使っており、「中京」を使うことは一切ありません。

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(NHK名古屋の放送画面より引用)

 地元マスコミだけでなく、NHKも長年そうなのですから、名古屋を中心とするこの3県に住む人々は、この自分たちの住むエリアを当たり前のように「東海」だと思っています。

 さらにマイナス要素があります。「中京」は名古屋市の異称でしかありませんから、特に岐阜県の飛騨や三重県の南部の人たちといった、名古屋から距離のあるところに住む人々は、自分が中京圏の人間だなんて微塵も思っていません。もし、愛知・三重・岐阜の全域をターゲットとするマーケティングで、「中京圏」という単語を使ってしまうと、これらの地域の顧客になり得た人々を自ら切り捨てることになるのです。

 このように、名古屋をターゲットとした広告や告知をする際に「中京圏」「中京地区」という単語を使うと、デメリットは見当たっても、メリットは全く見当たりません。

 名古屋は「中部地方のなかの東海地方のなかの東海3県の愛知県にある」ものであり、「中京」という地域区分は、地元には明確には存在しないということを、ぜひとも、知っていただければと思います。

 地元の意識としては、名古屋市周辺は「名古屋圏」、愛知・三重・岐阜全域は「東海」「東海3県」「愛三岐(あいさんぎ)」です。

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