三越はテレ東のL4YOU!をバラバラに解体してこの春終了…日本初の通販番組の後継

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三越のライオン(名古屋三越栄店)

地味に文春が報じたレディス4の終了

 2月2日に発売になった「週刊文春」の「テレビ『春の改編』スッパ抜き」として掲載された情報のなかに、地味に小さく書かれていたのが、テレビ東京「L4YOU!」の終了。

 関東以外の人にとっては「え?L4YOU!ってまだやってたの?」という感想になるでしょう。なぜなら、関東以外では既に全地域で、放送を打ち切っているからです。

 かつて、三越の売上の大きな部分を占めると言われ、日本初のテレビ通販番組の後継である「L4YOU!」が、通販全盛のこの時代に終わることは、テレビ通販の大きな節目と言えます。その背景とは。関係者に話を聞いてまとめました。

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全盛期は全国19局ネット

 「L4YOU!」は、1983(S58)年5月2日に「レディス4」としてスタートした平日午後4時の主婦向け情報番組ですが、番組内に「商品情報(現・L4セレクション)」という通販コーナーがあり、他局のドキュメンタリー番組で特集されるほど脅威の売上を誇った時期があります。

 最盛期には、地方局に番組販売の形をとりながらも、各地域で三越がスポンサーとなり、全国19局ネットにて放送。テレビ東京系列は6局しかないため、系列ではない地方局でも広く放送されていたことになります。

 日本テレビで放送された番組によると、当時は三越店舗と比べても、番組単体で5本の指に入る売上があったといわれ、まさに三越の屋台骨を支える存在でした。

日本初の通販番組の後継

 レディス4の番組開始当初から、2003(H15)年2月末まで20年間にわたって司会を務めたのが、高崎一郎氏。

 ニッポン放送のプロデューサー・DJとして「オールナイトニッポン」の立ち上げメンバーとして語られることの多い高崎氏ですが、レディス4に関しても、ただの司会者という存在ではありません。

 なぜなら、番組司会当時の高崎氏の肩書きは、三越顧問。三越の顧問に就くほどまでの功績を築き上げていたのです。

 日本で初めて「テレビ通販」を放送した番組は、1970(S45)年10月にフジテレビが関東ローカルでスタートした「東京ホームジョッキー」。そのなかの「産地直送テレビバーゲン」というコーナーが、日本初のテレビ通販と言われています。

 この企画は、海外の通販スタイルを日本に持ち込めないかと考えた三越が、海外の放送事情にも詳しかった高崎一郎氏と組んで実現させたもの。

 翌年には日本武道館で「オールアイテム日本一大バーゲン」を開催。フジテレビは番組連動紙媒体として「サンケイリビング新聞」を創刊し、独自の通販会社「ディノス」も立ち上げるのです。

三越事件でテレ東へ

 東京ホームジョッキーは「リビング4:00」「リビング4」「リビング2」と、番組タイトルを変えつつもフジテレビで続いたのですが、1982(S57)年春に突然終了します。

 その年に明るみにでたのが、スキャンダル三越事件でした。

 それから1年の時が流れ、まるで三越事件のほとぼりが冷めるのを待ったかのような時期に、それまでのフジテレビからテレビ東京へと放送局を変え、再び三越と高崎一郎氏がタッグを組んでスタートさせたのが「レディス4」。

 海外から日本に初めてテレビ通販を持ち込んだ三越による、日本初のテレビショッピング番組が、形をそのままに1年のブランクはありつつも47年続いてきた番組、それが「L4YOU!」なのです。

全国19局ネットが関東ローカルに

 現在「L4YOU!」を放送しているのは、テレビ東京だけです。関東でしか流れていないのです。かつて全国19局ネットを誇った番組の最後は惨めなものだ…と感じてしまいがちですが、背景には計算がありそうです。

 「L4YOU!」は、一般的な全国ネットの方式である、キー局による一括セールスではなく、テレビ東京は地方局に番組を販売し、そこに三越が各地方局と契約する形でスポンサードが行なわれました。

 通常と何が違うのかと言いますと、この形にすることで、三越の意思によって放送エリアを自在に増減できたのです。

 ちょうど1年前、全盛期よりは少なくなっていたものの「L4YOU!」は全国13局ネットで放送されていました。それが2016(H28)年春には7局に。このとき、北海道・長野・九州4局での放送が終了しました。

 さらに2016(H28)年秋には愛知と岡山・香川、関西4局での放送を終了。最後の半年間は関東ローカルでの放送となりました。

三越はわざわざ番組を「解体」した

 まるで、地方の三越店舗が閉店していくかのように、放送エリアが縮小されていったのですが、これには思惑を感じます。

 なぜなら、全国13局ネットの時点で三越がスポンサー降板を表明すれば、テレビ東京はその全国13局の枠組みで、他の通販会社やデパートに営業をしかけることができたはずなのです。つまりは、番組フォーマットはそのままに、三越ではない会社の通販番組にすることが可能でした。

 しかし、関東ローカルに番組を解体されてしまったあとでは、再び全国13局の形に戻すことは不可能です。三越が少しずつ放送エリアを削減していったことに、他の通販会社に「L4YOU!」を渡したくない、番組を絶対に継続させずに終わらせたいという意思を強く感じます。

 文春によりますと、テレビ東京の「L4YOU!」の後枠にはジャパネットたかたの番組が入るとのことです。

 これにより、日本初のテレビ通販番組の歴史が途絶えると考えるべきか、日本初のテレビ通販番組の歴史をジャパネットたかたが引き継ぐと考えるべきか。

 これだけテレビも含めて通販全盛の時代に、既得権益とも言える放送枠をあえて縮小させ畳んだ三越の姿を、高崎一郎氏は草葉の陰からどんな思いで見ているのでしょうか。

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コメント

  1. ドラム缶 より:

    BSの影響でしょうかね。最近はCS110度でQVCやショップチャンネルが24時間放送しており、フォーマットとしてはL4セレクションと似ています。その上わざわざBSでもサイマル放送をしています。多分そちらに取られたのではないかと

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