見方によって変わってしまう・日本初の民放FMラジオ局とはどこなのか?

170224

2月3日付中日新聞

日本のFMラジオ放送の歴史

 少し前のことになりますが、2月3日の中日新聞に「カセットテープで『エアチェック』…あの子に聴かせたのはもう昔 FM デジタル化の波?」という特集が組まれました。

 日本の地上波テレビ放送が完全デジタル化されて5年以上経ちますが、実は、日本ラジオは諸外国のようなデジタル化ではなく「ネット化」花盛り。デジタル試験放送は8年で幕を下ろしていた…などといったことが書かれていました。

 そのなかで、日本のFMラジオ放送がどのように始まったかが書かれていた件がありました。

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もちろん最初の最初はNHKだけど…

 この記事は、ノルウェーでFM放送が廃止されて、デジタルラジオ放送に切り替えられる計画がきっかけになっていたため、AMラジオではなくFMラジオにスポットが当てられていました。

 「日本のFM放送の事情はどうなのか…」で始まるところにこう書いてありました。

 「NHKがFM放送を開始したのは1969年」

 ところが、電波を出し始めたのはもっと前、なんですね。

 NHKが東京でFMの電波を出し始めたのは1957(S32)年12月24日ですから、「開始」よりも12年も遡ります。

 大阪が1958(S33)年、そして1962(S37)年には広島、福岡、名古屋、札幌、仙台、松山、熊本、1964(S39)年には静岡、岡山など23局、1965(S40)年にはさらに8局と、なんと「開始」よりも前に既に40局が「実験局・実用化試験局」として、実際には放送を始めていた状況で、1969(S44)年3月1日に正式に「放送局」として開局したということになります。

 歴史上は「実験局・実用化試験局」はあくまでも実験、「放送局」になったときが「開始」ではありますが、当時を知る人に聞くと、実験として12年も存在していた期間を「まだFMラジオは無かった」と言い切ってしまうのも、何だか微妙…とのこと。

 確かに、当時聞いていた人にとっては、それが実験だろうが、「放送はやっていた」という記憶になりますよね。

 この問題が民放にもあるのです。

「民間企業初は愛知」

 記事には、その同じ1969年に…として「同じ年に民間企業初の『愛知音楽エフエム放送(現在のエフエム愛知)』が開局し、その後、大阪、東京、福岡でもFM局が開局した」とあります。

 ここだけ読むと、日本の民放FMは名古屋が第1号で、次が大阪、さらに東京は3番手だったんだ…と思ってしまいます。

 FMではなくAMラジオを見ると、実際に日本の第1号の民放は名古屋の中部日本放送(CBCラジオ)になるので、「FMも民放初は名古屋だったんだ」と納得しかけてしまうのですが、これも、当時を知る人にとっては「うーん」なのだそうです。

実験なのに広告放送だった

 では、民放FMで最初に電波を出したのはどこか?となると「FM東海」なんですね。

 このFM東海は、1958(S33)年12月26日に実験局として開局。「東海」は東海地方の意味ではなく、東海大学。学校法人東海大学にFM実験の免許が交付され、東京都渋谷区から電波を発射したのです。エフエム愛知が開局するよりも11年も前のことです。

 さらに、FM東海は1960(S35)年に実用化試験局になるのですが、なんと、コマーシャルを流す広告放送の実施が認められたため、実験でありながら、商業放送・民間放送として運営されていたのです。

 今も続く「ジェットストリーム」は、1967(S42)年に日本航空をスポンサーとして、このFM東海でスタートしているのです。

 東海大学が運営する実験局であるFM東海が、広告放送をし続けることについて問題となり、再免許が交付されなかったにもかかわらず放送を続けたFM東海が一時不法無線局状態となったり、逆に、東海大学は再免許を拒否した郵政省を訴える…といったことが起きてしまうのです。

 しかし、株式会社エフエム東京の運営に移行することで折り合い、FM東海は1970(S45)年4月25日をもって廃局、翌日に現在のTOKYO FMが開局しているのです。現在もTOKYO FMの筆頭株主は東海大学です。

 そのため「日本初の民放FM」と言う定義が、実験とはいえ「FM東海」を指すのか、「エフエム愛知」を指すのかは、とても微妙なのです。

 ただ、あくまでも今回の記事は「民間企業初」と言っているのがポイントで、その場合はエフエム愛知で間違いありません。

 日本のFM放送の歴史を紐解く際には、実験期間がやたらと長かったこと、実験でありながら広告放送を行なっていた実用化試験局があったことに留意しないといけませんね。実験とはいえ、今も同一スポンサーで続いている番組があるくらいなのですから。

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