名古屋シネマテーク(名古屋・千種区)
系列局に放送を拒否された「ホームレス理事長」
名古屋では3月14日までの日程で公開となりました、東海テレビ制作のドキュメンタリー映画「ホームレス理事長」を見てきました。この映画は、もともとテレビ番組として取材・制作されたもので、昨年の1月に東海テレビローカルで放送されました。
愛知県知多市、廃校となった学校のとあるグラウンドで、いろんな理由で学校をやめてしまった元高校球児を、
受け入れるNPO法人「ルーキーズ」のメンバーが、野球に、高校卒業資格に再チャレンジしています。そのNPOの理事長が、その場を守ろうと身を削って奔走する姿と、挫折を味わった少年たちが白球を追いかける姿、両方の側面を長期間に渡って密着取材することで、背景にある社会の閉塞感の2つの側面を浮き彫りにしている作品です。
東京や大阪ではまだまだ公開が続きますので、ネタバレはしませんが、見ていると、最初は別々の問題に思えたことが、実は根本は同じということに気づきます。ところが、そのどちらも、解決策が見えてこない。本人が悪いのか、周囲が悪いのか、社会が悪いのか。結論は出ません。見た人それぞれが、何を考えるか。
この作品は、野球チームの監督が、生徒にビンタをするシーンがあることで、キー局のフジテレビや系列局からは放送を拒否され、映画で公開という形で、世に問うています。作中、本来ではありえない、取材対象が取材クルーに話しかけるいわゆる「メタ発言」もあり、テレビドキュメンタリーとしては、近年にない型にはまっていない作品となっているとともに、見終わっても、何もすっきりしない、何も解決しない、そんな作品です。
「あなたも、ヤジを飛ばすのだろうか?」
映画のキャッチフレーズ、最初は何を言っているのかわかりませんが、見終わると、その意味ははっきりとわかります。当事者意識を、もてるか。それは番組に出てくる子どもたちや理事長への気持ちはもちろん、今の日本社会で崖っぷちにある人たちのことについて、
当事者意識を、もてるか。見終わってからずっと、自分の心に問い続けています。
しかし、東海テレビのドキュメンタリーは、本当に骨太で、名古屋にこのテレビ局があったからこそ、このことを知ることができたんだと、そう思わせる力がありますね。
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