どう違う?明宝ハムと明方ハムを食べ比べてみる

150111

明宝ハムと明方ハム

元は同じものってどういうこと?

 岐阜県の特産品として知られるプレスハム。国産の豚肉を100%使い、懐かしい味のハムとして人気が高いのだけれども、似たような色あいのパッケージ、似たような見た目、さらに似たような名前の2商品があるのは、地元の人であれば知っているでしょう。

 テレビCMでもおなじみの…と書くと、実は両方ともCMを流しているので語弊があるのだけれども、やはりCMソングでも有名なのは「明宝ハム(めいほうはむ)」さらに、こちらもテレビCMを流している「明方ハム(みょうがたはむ)」

 今は郡上市となっていますが、かつては、明宝村という自治体があったために「明宝ハム」の方が主流の存在かと思いきや、明宝村はかつて明方村で改称しているというから、話はさらにややこしい。

 そんな明宝ハムと明方ハムを食べ比べる機会に恵まれましたので、味の違いを感じつつ、どうしてこんなことになっているのかを探ります。

[広告]

明方ハムとしてスタート

 時は1953(S28)年。畜産振興と山間地の食生活改善を目的に、農協が岐阜県郡上郡奥明方村にて「明方ハム(みょうがたはむ)」の製造を開始します。しかし、当初の目的とは違い「高級品」という扱いになってしまい、村民は買わない、村外では知名度が低いという状態が続き、農協の経営を圧迫してしまうほどに。

 口明方村(くちみょうがたむら)が八幡町となったことで、奥明方村は明方村に名前を変え、昭和40年代後半になると、添加物をあまり使っていないことが評価され、さらに農協が合併し「郡上農協」が発足。それをきっかけにハム加工場を新設し、その後は販売が増えるようになります。そしてある日脚光を浴びます。

 1980(S55)年、NHKの「明るい農村」で取りあげられると一気に注目の的に。それまではそれほどたくさんの製造量があったわけでなかったことから、「幻のハム・明方ハム」と言われるようになり、一気に製造量を増やそうという動きになります。

後発模倣品が正式名称を奪うブランディング

 そんな人気になったある日、問題が起きます。1988(S63)年、明方ハムの加工事業について、農協と村の間で引き合い問題が発生してしまうのです。すると農協はハムの加工場を八幡町に新設。明方村ではなく八幡町で作られる明方ハムになってしまったのです。

 これに明方村は激怒。それなら自分たちでもハムを作ろうと第三セクターを立ち上げ、従業員を引き抜き、レシピはそのままに、「明方の宝となる明宝ハム(めいほうはむ)」をと作り始めたのです。もともと、明方ハムは間違えて「めいほうはむ」と呼ばれてしまうことがたびたびあり、それを逆手にとったものでした。

 明宝ハムは岐阜県内はもちろん、名古屋のメディアを使って販路を拡大。その戦略は奏功し、名古屋での知名度は圧倒的に明方ハムよりも明宝ハムに。すると、村のバックアップ体制は本物でした。明方村は1992(H4)年、このハムのためと言ってもいいでしょう。村の名前自体を、ハムの名前である「明宝村(めいほうむら)」に変えてしまうのです。

 さらには、1989(H元)年に開業していた「めいほうスキー場」もメディアを使ったCM戦略が当たり、知名度がアップ。まさに村の全力です。ハムのために、読み間違いであった「めいほう」を正式名称にすることで、本来の名前であったはずの「明方ハム」の方が模倣品かのように見える状況を作り出したのです。

味の違いは?

 ではいただいてみましょう。まずはその「明宝ハム」から。水を一切使わない、国産豚肉100%のプレスハムだけあって、しっかり食べ応えのある食感、口のなかにハムの香りが広がるとともに、懐かしさを感じる逸品です。

 そして「明方ハム」は、さすがもともとはレシピが同じだけあって一緒です。ただ、明宝ハムよりも明方ハムの方が、若干しょっぱいですね。聞くと、明方ハムにだけ塩漬けするという工程があるそうで、それが味の違いを生み出しているようです。

今は両社の関係はどうなっているのでしょう

 ハムのために村名を変えた明宝村も、平成の大合併によって2004(H16)年、郡上市に。明方ハムの工場のある八幡町も同じく郡上市となり。今では明方ハムも明宝ハムも、どちらも郡上市の特産品となっています。

 明方ハムは今も農協が生産を続けており、農協はさらに広域で合併し、関市に本店のあるJAめぐみのが郡上市八幡町の工場で生産し、主にこの地方のみで流通しています。キャッチフレーズは「あのころの一途な味をそのままに。」ややしょっぱい味こそ、伝統の味であり、明宝ハムは模倣な上に味を変えていると言わんばかりです。

 一方の明宝ハムは、郡上市明宝の明宝特産物加工株式会社が製造を続けており、本社と工場は今も旧明宝村にあります。こちらはメディア戦略で広域に商品を販売。全国で販売されるようになっています。明宝ハムのキャッチフレーズは「幸せを作る工房」ですが、ラジオCMなどでは「幻の明宝ハム」と、かつての明方ハムのイメージを使っています。

 明方ハムと明宝ハム。

 今では郡上二大ハムと言われるようになり、「郡上特選ハムセット」として、両方がセットになった商品まで登場し、一見、両者はわかりあった…かのように思えなくも無いですが、本当に関係が雪どけしていたら「あのころの一途な味をそのままに」VS「幻の明宝ハム」というキャッチフレーズ合戦は、続いていないですよね…。

 でも正直、どっちもおいしかったので、ぜひ、食べくらべ、オススメです。岐阜の奥美濃、ギスギスした関係をしっかり噛み締めて味わってください。

コメントはこちらから

Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました