日本初の通販番組の後継であるL4YOU!(レディス4)がネット局大幅縮小…一方で新たなドラマ通販

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三越のライオン(※名古屋三越栄本店・当時)

レディス4からのL4YOU!がネット局大幅縮小

 テレビ東京の制作で、自社系列だけでなく他の系列局でも放送されている「L4YOU!」。この番組はかつて「レディス4」というタイトルで、現在でも同一番組として扱われており、1983(S58)年5月2日に30分番組としてスタート。その後45分、55分と拡大され33年目を向かえる長寿番組です。

 この番組は情報番組という体裁でありながら、番組の中ほどに「L4セレクション(かつては商品情報)」という三越による通販コーナーが入っているのが特徴で、かつては番組全体に三越の接客のような色が出ていました。

 実はこの番組、1983(S58)年からはテレビ東京で放送されていますが、その前身番組は他局の「日本初の通販番組」であり、その番組の仕掛け人が、レディス4の司会も長年担当されていました。そんな日本初の通販番組の流れを汲む「L4YOU!」がこの春、大幅に放送エリアを縮小します。

 三越も苦しくなってきた?いや…どうやら様子が違うのです。

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日本初の通販番組とは

 今ではすっかりテレビやラジオには通販がつきものですが、日本で初めて通販コーナーが登場した番組、それが1970(S45)年10月にフジテレビが関東ローカルでスタートした「東京ホームジョッキー」です。

 月曜から金曜まで、午後4時から45分間放送されたこの番組は、高崎一郎さんと中野安子さんの司会によるもので、ディノスによりますと「産地直送テレビバーゲン」という形で、番組選りすぐりの地方の逸品を紹介し、それを視聴者が買えるようにしたものだったそうです。

 それまでの日本に存在しなかった「テレビショッピング」はたちまち大人気に。1971(S46)年には日本武道館で「オールアイテム日本一大バーゲン」を開催、連動した紙媒体として「サンケイリビング新聞」が創刊され、通販会社「ディノス」が誕生します。

 東京ホームジョッキーは、1971(S46)年秋から「リビング4:00」その後「リビング4」となり、1975(S50)年秋からは放送時間を午後2時に変更して「リビング2」とタイトルを変え、合わせて11年半に渡って放送されました。日本初の通販番組は「東京ホームジョッキー」で、その成功によって「ディノス」は生まれているのです。

あれ?ディノスは三越じゃないよね?

 フジテレビでディノス。いや、レディス4はテレビ東京で三越だよね?

 そうなんです。ディノスは、東京ホームジョッキーの成功からフジテレビが立ち上げた会社という立ち位置でして、東京ホームジョッキー自体は、三越が海外の通販スタイルを日本に持ち込めないかと、海外の放送事情にも詳しかったDJでディレクターの高崎一郎さんと組んでスタートしたものだったのです。

 三越による東京ホームジョッキー・リビング4・リビング2の通販自体は好調だったのですが、1982(S57)年春にリビング2は突如終了。その年に発生したのが、スキャンダル「三越事件」です。

 それから1年1ヶ月という時間が経ち、三越事件のほとぼりが冷めるのを待っていたかのように、高崎一郎さんの司会そのままに、放送時間を元に戻し、テレビ局を変えて三越がスタートしたのが、1982(S58)年5月に始まる「レディス4」。今の「L4YOU!」です。

ネット局は三越のショップ扱い

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名古屋三越栄本店(当時)

 当初は30分番組でスタート。テレビ東京、テレビ大阪、テレビせとうちとネット局を拡大していったのですが、名古屋のテレビ愛知では放送されませんでした。当時名古屋三越は、地場百貨店・オリエンタル中村百貨店を買収して名前を変えたばかりで、別会社の独自運営だったために足並みが揃わなかったのです。

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オリエンタル中村百貨店だった頃のカンガルー像

 30分番組だったレディス4は、1985(S60)年春には45分番組に。テレビ愛知でも放送されるようになる90年代になると55分番組へと拡大。拡大したのは時間だけではありませんでした。

 日本テレビの情報番組でも「脅威の売上を誇るデパートの通販番組」として特集されるほどに、レディス4の通販は絶好調。三越は放送エリアをどんどん拡大し、テレビ東京系列6局だけでなく、テレ東系の無い地域では日テレ系、TBS系、フジ系と、系列構わず放送し、最盛期にはなんと「19局ネット」となるのです。

 最初は、テレビ東京の系列内でも放送されなかった地域があったものが、勢いが良くなった途端、6局しかないテレビ東京の系列の枠を超え、その3倍以上の放送局で放送されたわけですから、その背後には三越の意向があるとしか考えられません。「三越が放送したい地域で放送する番組」なわけです。

 さらに、レディス4は「三越レディス4店」であり、ネット局というのはいわばその「ショップ」という扱いだったのか、テレビ東京系列で福岡にTVQが開局するとなればその初日は福岡から全編生放送。テレビ北海道が旭川に中継局を建てて進出するとなれば、やはりその初日は旭川から全編生放送。

 系列以外の局でも、新たにTBS系のIBC岩手放送で放送がスタートするとなれば、「岩手特集」を放送するといった具合に、「レディス4が新たにスタートする地域」=「三越通販の新規出店」という形をとっていたのです。

 特筆すべきは、ネット局は増減を繰り返したのですが、それは決して、三越のリアル店舗のエリアとは関連性がなかったという点です。その点から考えると、レディス4の放送地域は、三越の実際の出店どうこうよりも、通販として儲かっているかどうかに主眼が置かれていたように思えます。とはいえ、リアル店舗がある地域では三越のブランドイメージが高いわけですから、通販の売上にも反映されてはいたでしょう。

レディス4からL4YOU!へそして…

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福岡三越

 東京ホームジョッキーからレディス4まで、長年番組そのものを企画立案し、司会も担当されてきた高崎一郎さんは2003(H15)年2月末をもって降板。2012(H24)年秋には「L4YOU!」と改題。ネット局はやや少なくなり、13局での放送が続けられてきました。それでもテレビ東京系列6局に比べたら倍以上です。

 それがこの春、3月31日をもって大幅に縮小です。2016(H28)年春より「L4YOU!」は、テレビ東京・テレビ愛知・テレビ大阪・テレビせとうち・びわ湖放送・奈良テレビ・テレビ和歌山の7局ネットに。それ以外の局では終了、すなわち「閉店」です。

 ここで驚きなのが、TBS系の信越放送、長崎放送、大分放送、宮崎放送の終了はわかるとして、テレビ東京系列のテレビ北海道とTVQ九州放送でも終了だということです。

 これも、過去の経緯から察するに「三越の意向」であると考えられます。そもそもが、三越の提供通販番組だったわけですから、流すだけでお金が入るものであり、地方局側から「打ち切る」なんてことは考えられません。

 TVQ九州放送は、1991(H3)年4月1日の開局のその日に福岡から「レディス4」の全編生放送を行い、開局の日に全国に向けて福岡から発信した記念番組であり、それ以降25年間ずっと放送し続けてきた存在です。まさか、開局25周年という記念すべきその日にそんな記念番組のネットを引き上げられてしまうとは…。

そして「新・ドラマ通販」

 三越は、長年スタジオアルタで収録をしていた「三越テレショップ」を2015(H27)年9月に終了させており、もうテレビ通販を縮小するばかりで先細りか…と思いきや…。

 なんとこの春、三越伊勢丹とテレビ東京系のBSジャパンによる、これまでにない全く新しい「ドラマ仕立てのTV通販番組」をスタートするというのです。

 「真夜中の百貨店~シークレットルームへようこそ」(火曜23:00~23:30)

 今や通販のゴールデンタイムは23時から25時と言われています。24時間通販専門チャンネルでも、この時間の売上が相当高いという話があります。日本初のテレビ通販を仕掛けた三越がそんな通販ゴールデンタイムに、ドラマで通販という「初物」にチャレンジするというわけです。

 昭和の頃は、全国ネットの地上波で主婦が午後にテレビショッピングというのが鉄板のビジネスモデルだったわけですが、それが崩れた…いや、むしろL4YOU!はよくここまでそのモデルを続けられたと言うべきでしょうか。

 日本初のテレビショッピングの流れを汲む「L4YOU!」の灯火はこの春、弱くなりますが、三越は次の火を灯します。それを再び、大きな炎とすることができるのか。注目です。

この記事を書いた人

TOPPY/川合登志和

記事や脚本を書いたり、名古屋のラジオやテレビの構成作家をしたり出演したり、地域のFMラジオで喋ったりディレクターしたりミキサーしたり、講師したり、サイト作ったりしてます。

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