いなくなったご意見番

写真・テレビ神奈川の旧社屋(現存せず)

最近では、日曜朝以外にあまり見かけなくなってしまいましたが、かつてテレビには「ご意見番」とも言える、怖いおじさんたちがいたものです。友人と、tvkの「新車情報」という番組の話をしていて、そんなことをふと思い出しました。

ウチの親父は若いころ、自動車メーカーに勤めていた(トヨタではない)こともあってか、この番組を三重テレビで毎週見ていたので、私も幼少の頃から、何気なくよく見ていました。

新車情報とは、毎週1台の車にスポットを当てて、その車を開発した責任者本人をスタジオに招き、モータージャーナリストの三本和彦氏が、あくまでもユーザー目線で、歯に衣着せぬ、べらんめえ口調で辛辣な指摘をするという番組でした。

定規のような棒を持ってきて、トランクスペースを図って、「これじゃゴルフバッグ縦に入らないでしょ」と怒ってみたり、カンガルーバンパーを指差して「これは何?」とメーカーの人に問いただし、「カンガルーバンパーです」と答えると、「日本にいったいどれだけのカンガルーがいるの?本当にこれにカンガルーが衝突したとして、曲がったりしないんだろうね?」と言ってみたり、

さらには自動車そのものだけでなく、車を取り巻く社会にも痛烈で、何より記憶に残っているのは、紅葉マークのことを「枯れ葉マーク」と言い捨てたことです。

スタジオに実際に自動車を搬入し、それを目の前にしてメーカーの開発者に直接苦言を呈するという番組スタイルであり、登場する担当者は、番組の冒頭から、針のむしろに座らされているかのような表情をしていました。

実際に、三本さんの指摘がマイナーチェンジで生かされたり、三本さんの考える、快適性を示す指標がメーカーの試験で採用されたりと、この番組の存在が、日本のこれまでの自動車産業に与えた影響は大きかったことでしょう。

今でも、tvkの新車情報の枠では自動車情報番組を放送していますが、三本さんのような、痛快で切れ味鋭いコメントを耳にすることはできません。

三本さんはご意見番といっても、あくまでも自動車社会に対してだけです。一方で、世の中全体へのご意見番がいたことを、私は忘れません。

テレビの生放送で「いかれポンチ」「自殺するところまでやりなさい・徹底的に!」「ちんこも立てず屁も立てず」「キチガイ」などと発言し、それでも一切謝罪もせず、ご自身の意見を貫き通した評論家…。その話はまた明日。

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