三国山 RADIO-i送信所跡地(愛知・瀬戸市)※2011年1月撮影
既存FM局の東山タワーとは別のところから
AMラジオの放送をFMステレオでも聞けるようにするという「FM補完中継局」。既に富山の北日本放送(KNB・90.2MHz)、愛媛の南海放送(RNB・91.7MHz)、鹿児島の南日本放送(MBC・92.8MHz)が放送を開始しており、これらの地域ではAMラジオの番組がそのままFMステレオでも聞けるようになっています。
ただし、周波数は90.1MHz~94.9MHz。アナログテレビの1chが使用していた周波数を活用したものなので、90.0MHzまでしか聞けないFMラジオやカーステレオ、カーナビでは聞くことができません。FM補完中継対応ラジオを購入するか、かつてアナログテレビの1chの音声が聞けたダイヤル選局のラジオや、外国製のラジオでなければなりません。
そんなFM補完中継局、この地方でも動きがありました。周波数は既に割り当てられており、CBCラジオと東海ラジオがそれぞれ92.9MHzと93.7MHz。ぎふチャンラジオは90.4MHzの予定となっています。
東京地区では、当初今春スタートを予定していたものが、秋以降の開始にずれ込むという報道があった一方で、名古屋地区ではこの秋のスタートを予定していることが、各社トップの年頭所感で明らかになっています。
そして、そのCBCラジオと東海ラジオのFM電波がどこから出るのかが、19日付中日新聞朝刊で報じられました。
「FM補完局でAM届ける ラジオの災害・電波障害対策」(1月19日付中日新聞朝刊)
補助金交付が決定の時点で感じていました
このブログでも記事にしましたが、先月、総務省から発表があり、CBCラジオと東海ラジオのFM補完中継局については、2局共同でFM送信アンテナを建設して費用を折半する、2局のFM送信アンテナを設置するのに4億5千万円もかかる、そのうち半額が補助されるということが明らかになりました。
2局共用のアンテナを設置するのに、4億5千万円。この時点で、送信所の新設だと気づきました。
名古屋のFMラジオ局は、NHK名古屋FM放送、FM AICHI、ZIP-FM、InterFM NAGOYAともに中京テレビ放送塔、通称「東山タワー」から電波が発射されています。出力は10kW(Inter FMのみ5kW)で、名古屋東部の丘陵から発射された電波の飛距離はそれほど飛びぬけてはおらず、豊橋には中継局を設置、また、FMは基本的に「県域放送」になっていることから、愛知県外には電波が飛ばないようになっています。
三国山にはかつてFM局があった
それに対して、今回電波を発射するのは愛知県瀬戸市と岐阜県土岐市にまたがる三国山です。三国山から電波を出すと飛ぶのは明らかで、以前はRADIO-iというFM局がここから出力5kWで放送をしていたのですが、その電波は三重県どころか奈良県、和歌山県、高知県でも聞けるほどに飛んでいたといわれ、本州で最大の放送エリアを有するFM局でもありました。
ところが、RADIO-iは会社破綻。2010(H22)年9月30日に放送を終了しました。その後、同じ周波数割当を使用する形で、東京のInterFMが名古屋局を開局しましたが、三国山にアンテナが設置されることはなく、東山タワーからの電波発射となり、RADIO-iに比べて大幅にエリアが狭まりました。
また、それ以前には2005(H17)年に開催された愛・地球博のイベントFM局「FM LOVEARTH(77.3MHz)」が、この三国山から出力200Wで電波を発射していた際には、200Wとは思えないほどに電波が飛び、豊橋のZIP-FM(77.1MHz)との混信問題を発生させてしまうほどでした。
三国山には問題があった
三国山はかつて、この地方で地上デジタル放送(地デジ)をスタートする際に、送信所を建設する候補地として最初に浮上したところでもあります。この三国山から1kWで地デジ電波の送信実験も行われたのですが、実際にここから地デジの電波が出ることはありませんでした。
この三国山は立地に大きな特徴があります。それは、県境にあるということ。愛知県と岐阜県の境界にあるため、愛知県だけ、岐阜県だけを放送エリアとする放送局のアンテナを置局するにはふさわしくないのです。
具体的に言いますと、FM AICHI、ZIP-FM、テレビ愛知は、愛知県のみを放送エリアとする放送局のため、岐阜県側に電波を飛ばしてはいけません。そのため、この岐阜県境に送信所を置いてしまうと、本来は放送エリアではない岐阜県側に電波が飛んでしまうことになってしまうことが問題になるのです。かといって、岐阜県側に電波を飛ばないように指向性をもたせると、その反対側に強力に飛んでしまい、三重県方面にやたらと強くなってしまうことになります。
ありし日の三国山RADIO-i送信所※2005年3月撮影
ではなぜ、RADIO-iはここに送信所を置けたのか。RADIO-iは、外国語放送免許のため、放送エリアが都道府県単位ではありません。これは現在のInterFM NAGOYAも同様なのですが、放送エリアは「名古屋市・瀬戸市・豊田市・岡崎市・常滑市・豊橋市・浜松市」となっています。常滑市があるのがポイントです。
RADIO-iに関しては、この県境から電波を出して、岐阜県側を抑制して反対側に飛びすぎたとしても、それは「常滑市のため」と言い切れる大義があり、また、出力が5kWと他局に比べて弱かったために、それを正当化することもでき、その結果、奈良県や和歌山県、高知県にも飛ぶという「オマケ」がついてきたというわけです。
CBCと東海ラジオは問題ない
ところが、CBCラジオと東海ラジオには、問題がありません。FM AICHIやZIP-FMが「愛知県域免許」なのに対して、CBCラジオと東海ラジオは「愛知・岐阜・三重」の東海3県への広域放送免許を持っています。なので、岐阜県側に電波を飛ばしても問題ない、どころか、飛ばしたほうがFM補完のエリアが広くなるというわけで、この三国山に送信所を置くことに躊躇することもなければ、とやかく言われることもない、また、新規に送信所を設置するというお金の面での躊躇も、半額の補助金という形になり解決しました。
新聞記事によりますと、既に免許申請は済ませてあるということなので、このまま順調にいけば、秋には92.9MHzと93.7MHzでCBCラジオと東海ラジオがFMステレオにて、この三国山から電波を発射し、愛知・岐阜・三重の広範囲でクリアに聴けるようになる予定です。
しかし、東京のケースもそうなのですが、東京タワーで10kWの出力を認められていたFM局が、東京スカイツリーに移転する際に、出力を7kWに抑えられたという事例があります。また、このFM補完中継局に関しては、同じ県にある既存FM局の出力・条件を超えられないという条件があります。
つまり、CBCラジオと東海ラジオのFMは、FM AICHIやZIP-FMの出力・条件を超えられないわけですから、東山タワーからの10kW相当に、この三国山からの電波の出力・条件を抑制されることになりますから、出力は低く抑えられ、また、岐阜に飛ばせなかったRADIO-iのように、電波の指向性はつけられないことから、劇的に電波が遠くまで飛ぶということはなさそうです。
それでも、秋からはFMステレオで、愛知・岐阜・三重の広範囲で、CBCラジオと東海ラジオが聴けるようになるわけですから、大きいです。
ただ、やはり課題は、私の車もそうですが、ラジオがよく聞かれる環境である車のラジオが、90.1MHzより上には対応していないという点ですね。
愛知国際放送(RADIO-i)の名が残る電柱※2011年1月撮影
これから、かつてRADIO-iの送信所のあった三国山に、CBCラジオと東海ラジオの共同FM送信所が建設されることでしょう。RADIO-iの送信所は、会社が破綻した際に取り壊されましたが、そのふもとまで来ていた電柱の引込み線はまだ生きているでしょうから、同じ場所にきっと建てられるんだろうなと予想していますが、果たして。
コメント
こんにちは。
三国山は過去で言えばFM局、現在では行政無線基地として、無線の重要拠点であることは今も昔も変わらないようですね。
さて、過去にFM放送が存在し、形を変えて補完FMという形で復活というのは、極めて珍しいケースになりそうですね。
確かにFMともなれば、AMよりは飛びにくいですから、指向性をつけようと思えば付けられますが、多段双ループアンテナを設置したとして、指向性をつけすぎるとエリア内でも受信できる地域とできない地域ができてしまうので、それ考えれば、例えば静岡県西部方面へのスピルオーバーはやむを得ないと思いますね。そうなると、発表は有りませんが、静岡県の補完FMの割り当て周波数が93.9MHzですから、こちらを後に変更する必要性は出てきそうですね。
夏の近距離Eスポが出た場合、ニッポン放送とCBCは0.1MHz差ですから、一部では混信も有るかもしれませんが、それを考えたらキリがなさそうですのであまり深くは追求しないでおきます。
長文駄文、失礼いたしました。
FM補完局の開設目的は”混信”対策もあったはずですが、
中京広域圏の2波目が93.7MHzで、静岡に93.9MHzを割り当てたんですよね。
豊橋~浜松付近はどうなることやら。
外国局相手でなければ、混信の考慮しなくてもいいってわけじゃないでしょうに。
試験電波を飛ばしてみて開局前に周波数の変更をするか、
開局後、早々に「豊橋局」「浜松局」を増設することになるかも。
今回のCBCと東海ラジオの動きを契機に、名古屋のFMも全般的な再編が加速するかもしれませんね。
というのも東海総合通信局としてはこの際、名古屋のFM送信所は三国山に集約させてしまおうと考えているかもしれないからです (各局の設備はすべて瀬戸市側に設置するものとして) 。
実際、過去にRADIO-iやFM LOVEARTHから得られた技術データを駆使すれば、送信出力や指向性、ERPに関して指導しやすいでしょうから、例えばCBCと東海ラジオに対しては原則、指向性については指導しない。しかしNHK名古屋とFM AICHI、ZIP-FMは免許区域が「愛知県」なので、これを厳密に適用すべく、RADIO-iに似せた送信パターンを持たせる (InterFM NAGOYAは免許区域に浜松市を含むものの、それ以外に明記されている都市が全て愛知県内なので、パターンについては基本的に先発3波に準じる扱いとする) 。さらに77.8MHzから93.7MHzまでの全6波共通として、送信出力は最大5KWまで、ERPは最大でもRADIO-i (51KW) のせいぜい半分程度 (25~6KW) といったところでしょうか (ちなみにInterFM NAGOYAのそれは18KW) 。
現時点 (2015年1月) では勝手に個人的な見方を綴っただけですが、もし実現すれば「名古屋の地上DTVと県域・広域FMの電波はすべて瀬戸市から」ということとなり、東山タワーは役割を終えて撤去。中京テレビにとっては、これで本当の笹島への全面移転が成るということになるでしょう。
FM補完中継局はNBCラジオも周波数を割り当てられてますが肝心の長崎なのか佐賀なのかはっきりしてほしいですNBCは長崎と佐賀をエリアにしていますが長崎はいいのですがNBCラジオ佐賀もいつかはFM補完中継局をやるのかどうか
>koku246さま コメントありがとうございます
三国山と日本平ということになりますので、0.2MHz離れていれば、そこまで混信は無いのでは?という気もします。三国山は静岡県西部どころか豊橋もそこまでしっかりカバーできないでしょうし、日本平も浜松はカバー対象ではないでしょうから、もし豊橋や浜松でFMが補完が必要となれば、また別途違う周波数の割当を申請するのでしょうね。ただ、実際にそういう動きになるかどうかはまたわかりませんが…。
>二川駅さま コメントありがとうございます
地デジの時もそうでしたが、スピルオーバー(エリア外受信)を潰すために、意図的にエリアの境目では混信を発生させているようにしか見えないというケースもありましたので、わざとという可能性も否定はできないと思います。仮に豊橋と浜松が実現することになっても、FM補完の場合、中継局は原則として出力100W以下という制約がありますので、豊橋(50W)は既存FMと同等のものができますが、浜松局(250W)は既存局ほどの出力は出せませんね…。
>アイ・フロッグさま コメントありがとうございます
既存FM局については、中京テレビ移転後も東山タワーを使用し続けるという方針が中日新聞で報じられていますので、今のところは、三国に集約といった話はまだ全くありませんが、今後の成り行きによっては何か動きがあるかもしれませんね。なんとなくですが、5kWも出させてくれないんじゃないか…?という気もしますが、予備免許交付が待たれます。
>wataruさま コメントありがとうございます
NBCやKBSのように、併記されているところは放送局の希望次第ということでしょうね。ただ、FM補完局については、必ずやらなければならないというものではなく、放送局自身が希望しなければ、周波数の割当が取消されることになっていますので、やる気が無い局は、この時期を逃すと、将来的にもやれなくなってしまいます。NBCがどう考えているのかは…何ともわかりませんね。
FM中継補間局の指向性ですがタワー工事中に偵察に行って来ましたが
東西南北でアンテナの数が違います,どの様に分けているのか分かりませんが
多分名古屋方面に多く付けているのではないでしょうか?
私は東北地震の津波をみてAM放送に危機感を持っていました、何故なら東海地方のAM送信所は総て東海ラジオ(七宝)CBC(長島)NHK (鍋田)と海の近くばかりです数日は自家発電で持ちますが、燃料が無くなったらアウトです
中家補間局が出来たので災害時の放送は確保され一安心です。