デジホン・ツーカー 携帯電話事業者が地域ごとに別会社だった頃…東海ではどこが出資していた?

1990年代…地域ごとに携帯電話事業者は別会社だった

かつて携帯電話の事業者は地域ごとに会社が分かれていました。現在も沖縄セルラー電話だけが残っていますが、IDOとセルラーが2000年(平成12年)に「au」に一本化、その翌年にはJ-フォンの地域会社が統合され全国で一本化されました。NTTドコモが一本化されたのは2008年(平成20年)のことでした。

そのため地域ごとに携帯電話会社のシェアが異なり、東海地区では「デジタルホン」のシェアが高く、トヨタが出資していた「IDO」を上回り、ドコモが過半数のシェアを獲れなかったという特徴がありました。

また、私は学生の頃に名古屋財界の一翼をになっていたヘラルドグループ(古川財閥)の企業でアルバイトをしていたのですが、山奥でどこの携帯電話も使えない環境のなか、ヘラルドパワーでデジタルホンの基地局だけが作られ、そのためにデジホンを契約したことで27年近く経った今もその流れでソフトバンクのままです。

当時、東海地区にあった携帯電話会社にはどんな企業が出資していたのか…改めて調べてみました。

エヌ・ティ・ティ東海移動通信網

まず「NTTDoCoMo」ですが、ここはもともとNTTの携帯電話事業として誕生しており、地域ごとに「分社化させられた」という経緯から、「NTTDoCoMo東海」はNTTドコモ100%出資子会社ということで特に出資者に地域性はありませんでした。

IDO日本移動通信(現au)

次に「IDO(イドー)」です。この会社は唯一特別扱いされていた事業者で、他の事業者は別々になっている「関東(首都圏)」と「中部(東海)」の2つの区域にまたがって事業を行っていました。「トヨタの販売店で契約できる移動電話」という触れ込みで自動車電話のイメージの強い事業者でした。

主な出資者を見てみましょう。日本移動通信株式会社(資本金:110億円)

出資者 出資比率
日本高速通信(株) 15%
トヨタ自動車(株) 13.6%
東京電力(株) 10.9%
日産自動車(株)
中部電力(株)
各5.5%
丸紅(株)
新日本製鉄(株)
三井物産(株)
三菱商事(株)
住友商事(株)
伊藤忠商事(株)
日商岩井(株)
各2.7%
日本郵便運送(株) 2.3%

出典:情報通信ジャーナル1992年5月号(電気通信振興会)

トヨタ自動車や中部電力も入っていますが、メインは首都圏だったでしょうし、地元の会社というラインナップではないですね。

東海デジタルホン(現ソフトバンク)

ドコモ、IDOに加えて新たな電波を与えられて東海地区で事業を開始したのが「東海デジタルホン」と「ツーカーセルラー東海」です。この2社の特徴は「東海4県内通話料金」の設定です。ドコモ・IDOの通話料金は、通話相手が「160km以内」か「160kmよりも遠いか」という2段階しかありませんでした。対する新たな2社は「東海4県内」という料金区分を設け、それが「160km以内の料金」よりも安くなったのです。

株式会社東海デジタルホン(資本金:30億円)

出資者 出資比率
日本テレコム(株) 29.5%
パシフィック・テレシス・インターナショナル 13.0%
東海旅客鉄道(株) 12.0%
ケーブル・アンド・ワイヤレス(株) 7.2%
トヨタ自動車(株)
(株)シーエスケイ
各4.0%
(株)トーエネック
中部日本ビルディング(株)
各3.0%
国際電信電話(株) 2.5%

出典:日本データ通信1993年3月号(日本データ通信協会)

全体的に見ると地元感があるわけではありませんが、IDOにも出資していたトヨタ自動車もいますし、JR東海にトーエネックに中日ビルと地元の面々が揃っていますね。名古屋財界とのつながりがささやかれていましたが、あってもおかしくないラインナップです。

ツーカーセルラー東海(現au)

そしてツーカーです。首都圏と中部では当初参入できなかった第二電電DDI系の「セルラー電話」と日産系の「ツーカー」が東海地区では一緒になっています。日産はIDOにも出資していましたから、トヨタもバランスをとるためにデジホンに出資したのかもしれませんね。ツーカーは単独での存続とはなっておらず、IDOとセルラーが一緒になったauへとのちに吸収されることになります。

株式会社ツーカーセルラー東海(資本金:20億円)

出資者 出資比率
日産自動車(株)
第二電電(株)
各26.25%
名古屋鉄道(株)
(株)中日新聞社
各5.0%
日本モトローラ(株) 4.5%
ソニー(株)
(株)日立製作所
各3.5%
ブリティッシュテレコム(ネザーランド)ホールディングビーヴィ 3.0%
国際電信電話(株) 2.5%

出典:日本データ通信1993年3月号(日本データ通信協会)

デジホンのJR東海に対してツーカーの名鉄、中日ビルに対して中日新聞と、棲み分けをしていたかのように感じるところもありますが、こちらはそれ以外に地元色はあまり感じられない顔ぶれとなっています。IDOはトヨタ系だけれどもあくまでもメインは首都圏、ツーカーはなんだかんだ言っても日産系…と考えると、東海デジタルホンが最も名古屋に根付くべくして登場した携帯電話事業者であったという側面はあるように感じますね。

今では携帯電話事業者に地域色は無くなりましたし、シェアの特性も当時とは変わっているとは思いますが、かつては携帯電話にも「どの会社が一番地元に根付いているか」という観点があり、それによってシェアが他の地域とは違うといったことも起きていた…それが1990年代でした。

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この記事を書いた人

TOPPY/川合登志和

記事や脚本を書いたり、名古屋のラジオやテレビの構成作家をしたり出演したり、地域のFMラジオで喋ったりディレクターしたりミキサーしたり、講師したり、サイト作ったりしてます。

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