フリーランスのライターです。妻・子あり。取扱品目は主に名古屋/放送/ポケモン。


ジャパネットたかたは高田社長の究極の「放送局ごっこ」だったのではないか

      2015/01/19   168

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ジャパネットたかたテレビショッピングの放送の様子

理屈でわかる部分とわからない部分

 ジャパネットたかたの創業者である高田明社長が15日退任し、長男で副社長だった高田旭人氏が翌日新社長に就任しました。社長としてテレビショッピングに出演した最終日、高田社長はBSジャパンの生放送で全国に向けて退任の挨拶をし、今後も1年間を目処にMCとして商品紹介だけはしたいということを表明。社長としての出演を終えました。

 そして翌日、同じくBSジャパンの生放送にて、社長の交替を機にジャパネットたかたのロゴマークを変更したと発表。この日から高田明氏は社長でなければ社員でもないにもかかわらず、その発表をしたのは高田「前」社長。新社長はテレビに出ることはなく、これからもジャパネットの顔は前社長であり続けるかのような錯覚に陥りました。

 ジャパネットたかたは、いまやテレビ通販大手の3位。独自のスタジオを建設し、生放送できるようにしたことで即応性が高まり、一気に業績が上がったという武勇伝は、これまでいくつものメディアで取り上げられてきました。

 私がジャパネットたかたのテレビ通販を初めて見たのは、まだテレビショッピングが福岡のスタジオでの録画で、ダチョウ倶楽部などタレントも出演していた頃。ただ、その頃から、放送マニアとしてひっかかるものがあったのです。

 スタジオの建設、生放送の重要性はよくわかります。ただ、それだけではどうしても理解できないところがあるのです。高田前社長は、放送マニアなのではないか…。通販で成功した一方で、究極の「放送局ごっこ」も成功させていたのではないか。そう思えてならないのです。

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スタジオはわかるけどそれはわからない

 ジャパネットたかたがテレビ通販をスタートしたのが1994(H6)年。当初は福岡のスタジオで収録し、制作会社が編集していたため、収録から放送まで数週間の時間がかかり、これでは商品の価格設定や新商品の販売について、ベストタイミングで提供することなどできません。

 そこでジャパネットたかたは自前のスタジオを建設。CSデジタル放送委託業者の認可を取得し、2001(H13)年に「ジャパネットスタジオ242」を開設し、CSチャンネルを開局。さらに地上波の民放テレビへの生放送をスタートさせ、その時々の最適価格で、ベストタイミングで商品を販売できるようになります。

 しかし。

 もうこの頃には私はジャパネットの通販に釘付けでして、いくつか、普通に商売の観点からはあり得ないポイントがありました。

お天気カメラ

「では、お天気カメラで佐世保の今の様子を見てみましょう」

 そうなんです。お天気カメラが設置されたのです。冷静に考えてください。お天気カメラの必要性って、商売上では感じることができませんよね。ライブ感を出す意味はありますが、お天気カメラといったって設置には相当な費用がかかります。あえてそこにコストをかける意味。私には通販という商売としての理屈で、このお天気カメラの必要性についての答えが出せませんでした。

ネットワーククレジット

 ジャパネットたかたの生放送の通販を見ていますと、冒頭に必ず…

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「この番組は、6局同時!生放送でお送りします!まずは三重県のMTV三重テレビ、tvkテレビ神奈川は神奈川県、TOKYO MXは首都圏で広く!テレ玉は埼玉県。京都放送は京都府、そしてサンテレビは兵庫だけじゃなく大阪でも見られますねー。」

 今から放送する番組が、各地でどのテレビ局にて放送されているのかという「ネットワーククレジット」を読み上げるんですよね。実はこれ、昭和50年代まではどのテレビ番組にもあったのですが、テレビ局の系列が全国に拡大するとともに、系列をまたいでのネットワーク番組が少なくなり、常にテレビ番組はどれも系列ごとに放送されるのが当たり前になり、事実上消滅したものなのです。

 実際のテレビ放送で消滅したものを、わざわざジャパネットが残している。ここの部分も、冷静に考えたら、すっとばして早く商品紹介に行ったほうが、たくさん商品を紹介できるわけです。このクレジットにも、商売上の必要な理由が思いつきません。

中継車

 ジャパネットたかたは、自前の中継車を導入します。そして、全国各地に出張しての生放送を実施するのです。この地方でも、愛知県や岐阜県に何度かやってきており、出張先からのテレビショッピングというのも、ジャパネットの特徴のひとつとなっています。

 しかしです。それほど頻繁に中継をやっているわけではありません。テレビ局だって、中継車はレンタルで賄うケースが多くあります。ジャパネットの使用頻度であれば、レンタルでも充分でしょう。そもそも、中継の際は必ずその地元のテレビ局と連携しているわけですから、そこのテレビ局の中継車を使わせてもらえば済むはずです。

 にもかかわらず、ジャパネットたかたは自前で中継車を2007(H19)年に導入しているのです。社としては「よりリアルな番組制作に向けて」という理由を発表していましたが、そこにも、どうしても通販会社に自前の中継車が必要な理由というのが考えつきません。

そもそもオープニングとテーマソングの必要性

 通販というのは、地上波やBSテレビ局の放送時間を、1分単位で購入してそこに通販番組を流してもらっているわけで、1分1秒がゼニなのです。他の通販番組を見ればわかりますが、多くは、いきなり商品紹介に入り、最後はどうしても説明しなければならない告知事項を表示してそれであっさり終わるというのがほとんどです。

 一方のジャパネットたかたはどうでしょう。「北の街から南の街まで、素敵な夢を届けます~」という、テーマソングとテーマアニメーション。それをわざわざ制作し、放送のたびに流しているのです。ここにも、秒単位でお金は発生しているにもかかわらずです。

 通販番組以外でもどうでしょう。地上波のテレビ番組でも、ニュースやバラエティにかかわらず、オープニングやエンディングというのはどんどん簡素化され、いきなり番組は始まり、スタッフロールが流れていきなり終わるというのがほとんどです。

 オープニングがしっかりあって、「また来週お会いしましょうさようなら~」と手を振って、しっかりエンディングを流して終わる番組など皆無です。なぜなら、そのタイミングはチャンネルを変えるという動機になってしまうからです。

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ジャパネットたかた本社(長崎・佐世保市)

究極の放送局ごっこでは?

 今は使用されていませんが、ジャパネットたかたが2012(H24)年に新「東京スタジオ」を開設した際、高田前社長は「若手制作スタッフの気持ちを高揚させるため」という主旨の発言をされています。

 つまり、ジャパネットたかたの通販番組というのは、もちろん「物を売る」という一番根幹にある通販会社としての使命が第一であるのは絶対ですが、その次に、「番組制作を楽しむ」「放送局ごっこを楽しむ」というものがあるのではないでしょうか。

・しっかりと時間をとったオープニング
・どこの放送局でネットされているかネットワーククレジットを発表
・生放送であってもVTRに入ったら「LIVE」の文字を消す
・エンディングでもしっかりと挨拶
・売上如何に関わらずテレビよりもラジオを重視

 いまや、実際の放送局には無くなってしまった、かつての放送局の慣習が、ジャパネットたかただけに引き継がれているのです。実際、現在はMCから外れていますが、キー局のアナウンサーから、ジャパネットたかたのMCに転職した方もいるほどです。

 テレビ局よりもテレビ局らしい、放送局よりも放送局らしいジャパネットたかた。なぜそうする必要があるのか。それをすることで、売上増に繋がる?から?…それだけとは、思えないんですよね。

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ジャパネットたかた旧本社(長崎・佐世保市)

 そしてこの社長退任で、ジャパネットたかたはロゴマークを、それまでの「JAPANET」から「Japanet」に変更。大文字から小文字にするというのも、近年、各地のテレビ局で行われているトレンドです。最後の最後まで、社長は放送局ごっこを楽しんでいたのではないでしょうか。そんな気がしてなりません。

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新ロゴマーク

 私がこれまで見た「ジャパネットたかたテレビショッピング」のなかで、最も高田前社長の気合いを感じられたのが、メ~テレ(名古屋テレビ)で放送された2007(H19)年3月13日の生放送テレビショッピングです。

 午前10時54分、全日空機が高知空港で胴体着陸事故を起こします。メ~テレでは、ジャパネットたかたの通販を流しながら、ANNのニュース速報を差し込むという対応となり、高田前社長が通販とANNのニュース速報との切り替えをするという状況に直面したのです。

 エンディングの高田前社長のやりきった感は、それ以前にもそれ以降にも見たことの無いものでした。

 もちろんアポなどとれず、見学のOKも出ませんでしたが、長崎県佐世保市まで行って、ジャパネットたかたの旧本社、新本社と聖地巡礼もしました。ところが逆に、ジャパネットが愛知にやってきてくれて、中部空港でのジャパネットたかた生放送で出待ちをして、高田前社長とお会いして一緒に写真を撮っていただいたことがあります。本当に嬉しかったです。これで、いつの日かゆっくりお時間ができた際には、放送マニアとしての放送談義をさせていただきたいな…と思ったりしてしまうのです。

 高田前社長、放送マニアですよね?

「社長、辞めます! 」 ジャパネットたかた 激闘365日の舞台裏

 - メディアの話

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Comment

  1. うみがめ says:

    「テレビの通販番組には古き良き昭和テレビの香りがする」とよく言われますが、なるほどそれはこういうことだったのですね。裏を返せば、今時のテレビは視聴率にこだわる余り、どんどん余裕が無くなっていることにもなりますね。

  2. トッピー@管理人 says:

    >うみがめさま コメントありがとうございます

    視聴率へのこだわりは昭和の頃からありました。無かったのはリモコンですね。リモコンのチャンネルボタンをいかに押させないか、それが今のテレビ番組の余裕の無さの根っこにあると思います。

  3. 大阪ガメラマン says:

    富士の6×9で集合写真を撮ってられた写真屋さんがルーツですからね。

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