土鍋のふちの上部に、酒とみりんと砂糖を練りこんだ味噌をぬりたくり、そこに水と昆布、そして野菜を入れてグツグツと。次第に味噌が溶けはじめ、味噌と融合してきたところで、最後に牡蠣を入れて、牡蠣が食べ頃になったところでいただきます。
我が家では幼い頃から、冬になると登場する定番メニューで、さすがに小さい頃は牡蠣のおいしさがよくわかりませんでしたが、成長するにつれて牡蠣をめぐって家庭内でバトルが起きるほどの、好物となりました。
この「牡蠣の土手鍋」。調べてみると、もとは広島県の郷土料理だそうで、まあ、牡蠣の産地のどこかではあると想像できたのですが、広島とは意外でした。なぜなら、そう、牡蠣の土手鍋は、赤味噌がメインだと、思い込んでいたからです。
もちろん、広島で使われるのは白味噌。しかも甘みのある「府中味噌」を使うのだそうです。こちらではみりんや砂糖を混ぜるのは、その流れを汲んだものでしょうか。ところが、この牡蠣の土手鍋というメニューは、考察が一筋縄ではいかないのです。
まず、普段は赤味噌ばかりで、白味噌なんてほとんど口にしないどころか、スーパーでも申し訳程度にしか置かれていない名古屋でも、牡蠣の土手鍋に関しては、白味噌を混ぜるのです。以前、名古屋の料理番組で先生はこんなことを言いました。
「赤味噌だけでは、牡蠣の土手鍋にはちょっと味が強すぎるんですね。牡蠣の土手鍋のためだけにわざわざ、白味噌を買うのもなんですけど…まあ、牡蠣の土手鍋のあとは、しばらくは白味噌の味噌汁とローテーションする感じで(笑)」
一方、大阪のテレビ局の料理番組にて、この牡蠣の土手鍋が紹介された際、先生がこんなことを言ったのです。
「牡蠣の土手鍋は白味噌だけではいけません。むしろ赤味噌の割合が若干多いくらいでないと、牡蠣とは合いませんので、他にも使い道ありますから、赤味噌、ぜひ買ってください。」
これはどういうことなのでしょう。大阪で赤味噌が必要と言い、名古屋で白味噌が必要と言う。ところがこれ、冷静に考えると、牡蠣の土手鍋に関しては、名古屋も大阪もほぼ同じレシピで紹介された、ということになるわけです。
同じ土手でも、とんちゃんを使って作る名古屋の「どて煮」には、白味噌は入りませんし、名古屋の味噌おでんにも白味噌は入りません。実に不思議です。それだけ、牡蠣はあわせ味噌との相性がいいと、そういうことなのでしょうかね。
と言っても、本場の広島はやっぱり白なんですよね?これは全国各地でどうなのか、気になります。あなたのおうちの「牡蠣の土手鍋」ぜひ教えてください。
シメはうどんです。アピタでこんなのを見かけました。「厳選主義・なめらかな喉ごし。愛知県産小麦粉を使用しました」という名のうどんです。同じメーカーの、どこの産地かわからない小麦粉のうどんは、1玉28円に対し、この厳選主義愛知県産は68円。
倍以上の価格差でしたけど、「厳選主義」で「愛知県産」と言われたら…、こっち買っちゃうよね。ごちそうさまでした。今度は本場の味も、食べてみようかなあ。
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