永遠の存在になるということ

写真:伊勢神宮(三重・伊勢市)※資料写真

私が毎年、元日に楽しみにしている番組があります。それは、伊勢神宮の式年遷宮を長期取材で追ったドキュメンタリー番組「時を紡いで」です。地元三重テレビ放送が制作しているもので、今回は第4弾「時を紡いで~伊勢神宮・女神の森」と題して三重テレビ、ぎふチャン、KBS京都テレビにて放送されました。

式年遷宮とは、簡単に言いますと20年に一度、伊勢神宮の社殿などを新築する行事です。伊勢神宮の建物や鳥居、橋などは20年に一度全て造り替えられるのです。

今回の特番は、その式年遷宮が持つ伝統の意味と、そこに見る日本人の精神についてを、デンマーク人建築家のスヴェン・ヴァスさんの目線から描いたもので、外国人の目から映し出したことで、とても客観的で、押し付けがましくない仕上がりになっていました。

そして改めて、自分の人生の方向性について、考えるきっかけとなりました。今回は長文です。

<まずは番組の概要です>

なぜ、伊勢神宮は20年に一度全てを作り変える「遷宮」を行うのかといいますと、それは「常若」の精神によるもので、建築手法などを後世に代々と語り継ぐことができ、なおかつ、伊勢神宮は建築様式がとても古いのに、それ自体は常に新しいという状態を保つことができるからです。

かつては、日本中の多くの神社が遷宮を行っていたのですが、御用材の枯渇などの理由で行われなくなっており、今、伊勢神宮と同じように60年ぶりの遷宮が行われている出雲大社でも、社殿の建て替えは江戸時代から行われていないとのこと。

番組では、出雲大社の遷宮行事も取材されていました。私は昨年、出雲に御本殿を見に行ったこともあり、その大社造の独特さ、伊勢神宮とは全く違う趣を、改めて感じることができました。

今回は、伊勢神宮の周りに広がる神宮林に注目した構成になっていました。神宮林は、江戸時代に御用材を伐採しつくしてしまっていて、それ以降の遷宮では、木曽から御用材を運んでいるのですが、植林の計画が立てられ、100年後の遷宮からは神宮林の御用材に戻るとのこと。驚くのが、その計画は大正時代に立てられたもので、数百年というスパンで物事が動いているということです。

スヴェンさんは言います。伊勢神宮と森は同じような存在だと。

なぜなら、今、森に天高く伸びている木と、200年後の森で同じように伸びている木は違えども、森自体の雰囲気は変わらず永遠の存在であり、同じく伊勢神宮も、今ある社殿と200年後の社殿は違えども、これまた永遠の存在であると。

作り変えるからこそ永遠の存在である伊勢神宮。同様の事例は世界じゅう探してもどこにもなく、人工のものでありながら永遠であるのは、伊勢神宮だけであり、日本人はもっと伊勢神宮を誇りに思うべきである…。

<それを見ての私の感想です>

果たして自分は永遠の存在になれるだろうか。

人間にはもちろん寿命があり、いつかはこの世から消えてなくなる運命にあります。私は母を亡くしており、母はもうこの世からいなくなっているわけですが、子どもである私が存在していることで、間違いなく、母はこの世に存在したという証明になっているわけです。

私は数年前、路上詩人の方に出会い、そこで「なんかやりたいことがあるのに、言い出せずにやり出せないでいる目をしてるね」と言われ、それ以降、自分の人生は自分のやりたいことをやるためのものだ、と心に決め、毎日を過ごしてきました。

しかし、やりたいことをやる代わりに、あることを犠牲…いや、見て見ぬフリをしてきました。それは、普通に結婚して、普通に子どもを育てることです。やりたいことで生計を立てられるようになるまではと、それを敢えて無視して人生を歩んできました。

果たしてそれだけでいいのだろうか。

伊勢神宮が遷宮によって永遠の存在であるように、人間は子どもを作り子孫を繋げていくことで、自分はこの世から消えても、永遠の存在の一部となり得るのです。ですから、自分が子どもを作らないということは、永遠を永遠でなくしてしまうことにならないか、そのことによって、自分の父や母の存在も永遠でなくしてしまうのではないか、今回の番組はそれを痛感させられました。

もちろん、やりたいことをやって、子どもも育てられる人生であれば、それに越したことはないわけです。それに、経済的な理由だけで子どもを作らずにいるわけではありません。

でも、これまではそれを考えることさえせずに、人生を歩んできました。相手もあることですので、簡単に結論を出す気もありませんし、出してもいけないと思います。だからこそ、これから数年間じっくりと、自分が永遠の一部になれるかどうか、考えてみたいと思います。

やりたいことをやることと、子どもを産み育てることは、相反することではないはずですし、どちらかをどちらかの言い訳にしてはいけないことですものね。

天照大神をお祀りする神宮と、私の人生なんかを並べて語ってしまったことをお許しください。近いうちに伊勢に赴き、謝らせていただくと同時に、今回感じたことを、神さまにお話してみたいと思います。

この記事を書いた人

TOPPY/川合登志和

記事や脚本を書いたり、名古屋のラジオやテレビの構成作家をしたり出演したり、地域のFMラジオで喋ったりディレクターしたりミキサーしたり、講師したり、サイト作ったりしてます。

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