写真:震災後に被災地を取材するTXNの取材班(宮城・名取市)
間もなく、あの東日本大震災から1年を迎えようとしています。丸1年となる3月11日には、各テレビ局ともに特別番組を予定しています。そのうち、テレビ東京は「ドラマ」を放送します。
このドラマは、震災が起きた日の新聞社「河北新報」を舞台にしたものなのですが、何か、思惑があるのではないかという噂がネット上で立ち始めています。テレビ東京が宮城の新聞社のドラマを作る意味を、
考察してみます。今回、テレビ東京が制作するドラマのタイトルは、
「明日をあきらめない・・・がれきの中の新聞社
~河北新報のいちばん長い日~」
河北新報とは、仙台に本社を置き東北をカバーするブロック紙で、宮城県では圧倒的なシェア誇る新聞社です。その河北新報が、被災しながらも新聞発行を続け、被災者に寄り添う様子のドラマ化で、テレビ東京の報道局とドラマ制作室が共同でドラマを制作するのはこれが初めてとのこと。テレビ東京の力の入れ様が伝わってきます。
ここで、一番問題になってくるのは、「テレビ東京系列は宮城県では見られない」ということです。日本の民間テレビ放送は昭和の頃まで、都会は4~5局、地方は2~3局という時代が長く続きました。そのため、地方局は複数のキー局の番組を混ぜて編成するクロスネット局が多く、都会と地方では見られるチャンネル数が違うのが当たり前でした。
しかし、バブル景気の訪れとともに、国の全国4局化政策の下、完全ではありませんが、ほぼ、日本全国で、4つ以上の民間テレビ放送が見られる体制が構築されました。
4つとは、日本テレビ系列、TBSテレビ系列、フジテレビ系列、テレビ朝日系列。そう。テレビ東京系列は、全国では見られないのです。
テレビ東京系列が見られるのは、
免許エリアで言いますと、北海道、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県、愛知県、大阪府、岡山県、香川県、福岡県の13都道府県のみ。
また、系列ではないものの、テレビ東京の番組をたくさん流しているテレビ局がある、岐阜県、三重県、滋賀県、奈良県、和歌山県でも、それなりにテレビ東京の番組を見ることができます。
しかし、それ以外の地区では、レビ東京の番組は「おまけ」のような存在で、地方局の空き時間にちょこっと放送される程度なのです。このことから、テレビ東京が、宮城県の新聞社を舞台にしたドラマを作るのが、異例であることがお分かりいただけると思います。
一方、テレビ東京には系列のBSデジタル放送局「BSジャパン」があり、こちらは全国で見られることから、今回のドラマは、地上波でのテレビ東京系列(TXN)での放送が3月4日(19:54~)、宮城県でも見ることができるBSジャパンでの放送が、震災当日の3月11日(21:00~)ということになっています。
では、宮城県の方々には、ドラマをその11日にBSジャパンで見て欲しい、つまり、テレビ東京=BSジャパンの東北での認知度を高めるために、このドラマを制作したという目的があるのかと思いきや、宮城県でもこのドラマは地上波で放送されるのです。
放送するのは、普段「河北新報ニュース」を放送している、TBSテレビ系列の東北放送(TBCテレビ)です。TBCテレビでは、BSジャパンで放送される前日、3月10日(13:00~)放送されることになっています。
今回、東日本大震災で、テレビ東京が露呈してしまったのは、東北に関してあまりにも取材体制が手薄であるということ。震災後の現地の取材も、冒頭の写真のように、テレビ東京やテレビ愛知が東北に入って取材を行いました。
テレビ東京系列(TXNネットワーク)は、全国に6つのテレビ局があるものの、その配置はかなり歪です。東京から西については、東京(関東)、名古屋(中部)、大阪(近畿)、岡山(中国)、高松(四国)、福岡(九州)と、(※岡山・高松はともにテレビせとうち)それぞれ、大きな区割りの「地方」に、かならず一つ拠点を配置できているのですが、
東京から北は、東北をすっ飛ばしていきなりテレビ北海道なのです。
詳しくは別の機会に書きますが、もともと、テレビ東京は、国としては系列化を想定しておらず、愛知と大阪の独立局用電波を使って、テレビ東京と日経が「系列のようなもの」を作り上げたことに始まります。
さらに、岡山県で、山陽新聞と地元政財界の意地によって「3番目」のテレビ局が作られることになったものの、岡山県と香川県は電波が足りず、互いの県のテレビ局が相互に乗り入れ、結果として、岡山県としては3番目なのに、地区としては5番目のテレビ局となり、テレビ東京と系列を組むしかなかったということ、
それに気を良くしたテレビ東京が、バブル景気に乗って「列島縦貫ネットワーク」を形成するために、札幌と福岡に作ったということで、国の政策によって系列を拡大した他の系列とは、全く違う成り立ちをしているので、映る地域はたったの6つ、しかも東北はすっ飛ばされているという、歪な状態になっているのです。
系列最後の開局となったTVQ九州放送(当時はTXN九州)が開局したのが1991(H3)年。それから20年。テレビ東京は系列を拡大することはありませんでした。しかしです。一度だけ、テレビ東京が系列拡大構想を発表したことがあります。
2007(H19)年5月末のことでした。ところが、その後、続報は出てこないどころか、事実上撤回するかのような発言が、現在の社長から出たために、系列拡大構想はトーンダウンしました。構想を発表した際も、トーンダウンした際も、テレビ東京は、あくまでも地元にやる気がなければ、新局の開局は無いというスタンスをとってきました。
また、これはテレビ東京系列に限らずですが、地上デジタル放送への完全移行が完了するまでは、アナログとデジタルの二重投資になってしまうため、新しいテレビ局を作ることは難しいという事情もありました。では、これまでのテレビ東京の系列局は、どのように作られてきたのかと言いますと、テレビ大阪は、最初の系列局として、日経とテレビ東京が自力で設置したのですが、その後は、
テレビ愛知は日経と中日新聞社の事実上合弁。
テレビせとうちは日経と山陽新聞社の事実上合弁。
テレビ北海道は日経と北海道新聞社の事実上合弁。
TVQ九州放送は日経と西日本新聞社の事実上合弁。
つまりです。ほとんどが、地元新聞社と日本経済新聞社の手によって、テレビ東京系列のテレビ局というのは誕生しているのです。本来はTBS系列のテレビ局であるTBCテレビ(東北放送)を持つ河北新報。
その河北新報が、テレビ東京と手を組んでドラマを作る。これが、何かの伏線に思えて来ないでしょうか。さらに、昨年6月に施行された改正放送法により、この1つの放送局が4つまで電波を持つことが可能になりました。まとめてみます。
・テレビ東京はこれまで地方の新聞社と合弁で系列局を作ってきた
・東北さえカバーすればテレビ東京は全国の取材体制をほぼ整えられる
・宮城県はこの3月31日に地上デジタル放送に完全移行する
・ひとつのテレビ局が複数の電波を出すことが可能に
・震災の復興にテレビ東京ができる一番大きなこととは何か
今回、テレビ東京が河北新報のドラマを制作する意味は、ひょっとするとひょっとするかもしれません。
ドラマも見ますが、本も読みたいと思います。
コメント
TOPPYさんはじめまして。私は広島県福山市に住んでいる深津安那(ふかつやすな。男性)と申します。今回はこの記事について思うことがあり、投稿させて頂きます。
今回テレビ東京が宮城県の新聞社を舞台にしたテレビドラマを作ることで宮城県にテレビ東京系列に属する民間テレビ放送局が開局するのではないかという噂が浮上しているようですが、私はそれはないのではないかと思っております。TOPPYさんの記事を見て感じたのは宮城県の人口はテレビせとうちの放送区域である岡山・香川両県の合計人口よりも何十万人も少ないことや宮城県は岡山・香川両県ほど工業が盛んではないことといった事実が抜けていることです。百万都市・仙台市があることや平地が多い地形であることでは岡山・香川両県より恵まれているとは思うのですが、果たして既存局がどのような顔をするのか、経営は成り立つのか、他の政令指定都市を有しているがテレビ東京系列に属する民間テレビ放送局のない府県(京都府と新潟・静岡・兵庫・広島・熊本各県)が先を越されたと憤慨しないかなど越えなければならないハードルはいくつもあり、実現は困難ではないかと思うのです。
私は政令指定都市を有しながらテレビ東京系列に属する民間テレビ放送局のない地域に住んでおりますが、実は5年前の当時のテレビ東京の社長が公にした構想には反対の立場をとっております。確かに広島県でもテレビ東京系列に属する民間テレビ放送局の開局を望む意見はないわけではなく、地元紙・中国新聞朝刊の投稿欄にも過去二度そういう趣旨の投稿が掲載されたことがあります。しかし、広島県も実は岡山・香川両県よりわずかですが人口が少ないことやテレビせとうちの経営が相当厳しいことは福山市の隣にある井原市に中継局を設置できないでいることでもうかがえること、都道府県単位で放送区域を設定するやり方は放送格差の是正に繋がらない上に経営難にあえぐ放送局を生み出すだけだと考えていることからこの構想に賛成できないのです。テレビ東京としても東北地方に拠点を置きたい気持ちは分かりますが京都市や神戸市、広島市が蔑ろにされるのはたまったものではないし、テレビせとうちやテレビ北海道の苦境を知っていて宮城県に進出という危ない橋を渡るとは考えられません。できれば5年前の構想は正式に白紙撤回を表明するか宮城県+山形県+福島県、広島県+山口県+愛媛県、福岡県+佐賀県+熊本県…というように広域局で進出するようにし、全国に20ある政令指定都市ではどこでも見られるようにするかして頂きたいと考えているところです。
こういう意見を書くと「ネクラ」などと書きこむ心ない輩がおり、本来は書き込みはしたくなかったのですが、あえて意見させて頂いた次第です。
>深津安那さま
はじめまして、コメントありがとうございます。
この件につきましては、
私の思うところは本文に書いた通りです。
それ以上、何か知っているわけでもありませんし、
実際にどんな思惑があるのかはわかりません。
来週放送されるドラマを、
しっかりと見ようと思っています。
メーテレの佐藤千晶アナの親父さんが、河北新報の記者でしたよね。
メーテレのupで、レポが以前‥‥‥‥
気にして見るのも、このドラマの味わいかも?
初めまして、以前あったHPの頃から時折拝見させていただいております。
なるほど、言われてみれば、テレビ東京系列局の配置は確かに西高東低ですね。まあこれも、所謂太平洋ベルト地帯に人口や産業が集中していた弊害かも知れません。
今回のドラマ放映が直ちに増チャンネルにはつながらないにしても、これでテレ東が東北に取材拠点を構えるきっかけになれば、と思っています。
テレビ東京が系列局のないエリアの地方紙の河北新報をドラマにするとは、骨太な内容のドラマになるのでしょうね!!
これが他局(特にフジや日テレ)なら、視聴率優先で内容が薄っぺらな内容になるのでしょうが…。
>本来はTBS系列のテレビ局である
>TBCテレビ(東北放送)を持つ河北新報。
>その河北新報が、テレビ東京と手を組んでドラマを作る。
>これが、何かの伏線に思えて来ないでしょうか。
TBSホールディングスが日経新聞と提携しましたが、これがTBSテレビ系列局でのテレ東番組のネット拡大もふくまれていればいいのですけどね。当のテレ東はこの提携に対して態度をあきらかにしていないのが気になりますが。
>大府市のテレ東オタさま コメントありがとうございます
そうなんですね。それは知りませんでした。
>うみがめさま コメントありがとうございます
そうなんですよね。テレビ東京の系列局配置は、
あくまでもテレビ東京の意思だけで実現したものなので、
他とは違って、バランスを取ろうというものでは
ないのですよね。
仰るとおり、新局ということにはならないかもしれませんが、
震災を機に、東北へのバランスを取ろうという動きには
なっていますよね。
>チャンさま コメントありがとうございます
しかも今回は、ドラマ班と報道が初めて一緒に、
ということですから、そういう意味でも注目したいと思います。
>Piichanさま コメントありがとうございます
TBSと日経が提携したのは、
「スマートフォンのコンテンツ制作」だけで、
放送に関して何か提携したわけでもありませんから、
特にテレビ東京がコメントをする立場にはならないでしょうね。
広島県と兵庫県と京都府と静岡県と宮城県にテレビ東京系列がないのは非常に困ります。テレビ東京のご意見の要望も書いて送っていますが。広島県は中四国で一番人口が多い地域で宮城県は東北地方で一番人口が多い地域です。兵庫県と京都府と静岡県は47都道府県の人口が多い順の20位以内に入っている地域です。広島県にテレビ広島の新規開局の上日本テレビ系列の広島テレビは広島放送、フジテレビ系列のテレビ新広島(TSS)はテレビ山陽(TSS)に改名、静岡県にTXN静岡中央放送を新規開局の上日本テレビ系列の静岡第一テレビは静岡テレビ、フジテレビ系列のテレビ静岡は静岡文化放送に改名、宮城県にテレビ宮城の新規開局の上日本テレビ系列のミヤギテレビは宮城放送に改名、兵庫県と京都府にテレビ大阪の拡大をしてほしいです。広島県では東広島市でケーブルテレビの受信でテレビせとうちを見ることができますが広島市では完全にテレビ東京系列(TVQ九州放送、テレビせとうち)を見ることができないので残念です。早く開局してほしいです。テレビ東京系列がない地域は遅れだけでなく遅れの拡大や打ち切りや放送していない番組もあります。