関西のワイドFMに予備免許・生駒山から出力7kWで来春開始…で広がる大阪のFM格差問題

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生駒山のアンテナ群(奈良・生駒市/大阪・東大阪市)

東名阪とも7kWの出力に

 AMラジオの放送をFMラジオでも聞けるようにする「ワイドFM(FM補完中継局)」。

 名古屋の東海ラジオとCBCラジオは三国山(愛知・岐阜県境)に送信所を建設しこの秋スタート、東京のTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送はスカイツリーからこの冬スタート予定と発表されています。

 三大都市圏のなかで唯一、予備免許が出ていなかった大阪のAMラジオに、7月27日付けで予備免許を交付すると、近畿総合通信局から発表がありました。

近畿広域AMラジオ3社のFM補完中継局に予備免許

 これにより、来年春からはMBSラジオが90.6MHz、ABCラジオが93.3MHz、ラジオ大阪が91.9MHzで聞けるようになる見通しとなったわけですが…。

 注目は、生駒山に送信所を設置し、出力が7kWという点です。東京と名古屋も7kWなので、大阪も…なのでしょうけれども、大阪は、既存のFM局との兼ね合いがとても難しいと言われていて、よくこの出力に落ち着いたものだと思う一方で、生駒山からでこの出力ですと、ひょっとして名古屋でも聞けるかも?しれません。

 そして気になる、既存FM局3つのうち2つとの大きな「格差」。

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大阪のFM局の「格差」…電波を飛ばせない局

 現在、大阪府には民放FM局が3つあるのですが、そのなかには「格差問題」があります。

 大阪府のみを放送エリアとする、FM802(80.2MHz)とfm osaka(85.1MHz)は、出力は10kWと高出力なのですが、送信所が飯盛山というところにあります。飯盛山は標高314.3メートルです。

 飯盛山は生駒山地の北西側にあります。生駒山が標高641.98メートルですから、生駒山地のかなり低い山の頂上から電波を出していることになります。となれば、南東側には倍以上の高さの壁があるわけですから、電波が飛ぶのは大阪府側だけで、奈良県側には電波が飛ばない立地であるといえます。

 FM802とfm osakaの放送免許は、大阪府だけの県域免許となっています。なので、建前上はこれでいいわけです。つっこまれるといけないので書いておきますが、府でも免許は「県域」です。

大阪のFM局の「格差」…電波を飛ばせる局

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FM COCOLO送信所

 ところが、大阪のもうひとつの民放FM局であるFM COCOLO(76.5MHz)は、関西の広域テレビ局の送信所と同じく、その、高い生駒山から電波を出しているのです。しかも、出力は10kWです。生駒山地の一番高いところから10kWで電波を出していますから、大阪府だけでなく奈良県側にも電波がしっかり飛んでおり、外部アンテナを建ててかつ混信さえ回避できれば、三重県どころか愛知県の三河地区でも受信可能な場所がたくさんあります。

 なぜ、そんなことが起きるのかといいますと、FM COCOLOは免許が違うのです。

 FM COCOLOの放送免許は、都市単位でカバーする外国語放送という通常のFM局とは違う特殊な免許となっており、大阪市・堺市・東大阪市・関西国際空港・神戸市・尼崎市・京都市・奈良市と、これだけの都市を都市単位でカバーできるわけですが、事実上は関西広域免許です。

 なので、生駒山から出力10kWで放送できるのです。

 ただ、FM COCOLOは会社としては一度破綻しており、現在はFM802に吸収されていますので、FM802は「大阪府だけのFM802」と「(事実上の)関西広域のFM COCOLO」の2つの電波を持っているということになります。

かつてNHK-FMは生駒山から電波を出していた

 NHK-FMはどうかといいますと、現在はFM802やfm osakaと同じく、飯盛山から88.1MHz・10kWでの放送となっており、大阪府のみの免許なのですが…、実はかつては生駒山に送信所があったのです。

 当時、NHK-FMは県域免許になっておらず、NHK-FM大阪は生駒山頂から関西広域に向けて電波を出していたのです。ところが、国の方針が「FMは県域放送を基本とする」というものに変わり、NHK-FM大阪も県域免許となり、生駒山から飯盛山へと「格下げ」になっているのです。

東京や名古屋とは事情が違う

 FM局は県域免許であるのに対し、AM局は広域免許です。

 例えば、東京ではTBSラジオ・文化放送・ニッポン放送が関東1都6県のエリアであるのに対してTOKYO FMやJ-waveは東京都だけ。大阪では毎日放送や朝日放送、ラジオ大阪が近畿2府4県がエリアであるのに対して、FM802とfm osakaは大阪府だけです。

 このワイドFMは、既存のFM局に配慮して、いくらAMが広域局であっても、同じ県内にある既存FM局の同条件を超えてはいけないということになっています。

 東京の場合、低い東京タワーの局が10kWなのに対して、高い東京スカイツリーはJ-waveに倣って7kW、名古屋の場合は、東京スカイツリーの計算式を当てはめることとなり、低い東山タワーの局が10kWなのに対して、高い三国山が7kWということになったわけです。

 関西には既存FM局に、飯盛山10kWと生駒山10kWの両方があり、ワイドFMの送信所が生駒山になった場合、出力がどうなるかが注目されていましたが…。

 結果として、事情の違う東京や名古屋と同じく、7kWに収まる格好となったということですね

 既存FM局の同条件、というのが「内輪」で考えられたと推測できます。

 FMの電波は、出力よりも標高の高さがモノを言います。なので、314.3メートルの10kWと、641.98メートルの7kWでは、比べ物にならないほど後者が有利です。

生駒山から7kWで電波を出したら?

 予備免許が交付され、なおかつ開始時期が「来春」と同時に発表になっていますので、東京のように遅れることは無いでしょう。来年の春からは、かなり広い地域でMBSラジオが90.6MHz、ABCラジオが93.3MHz、ラジオ大阪が91.9MHzで聞けることになります。

 実際にはどれくらいの範囲で聞けるでしょうか?

 名古屋では、外部アンテナを建てれば、生駒山から10kWのFM COCOLOが受信できる地域が多いですから、それよりも若干弱いと考えると、充分、実用になると思います。また、大阪方面への見通しが良い環境のところでは、かつて生駒山から放送されていたアナログテレビ放送の音声がラジカセで入るという場所も多かったです。アナログテレビの音声は2.5kWでしたから、アナログテレビの頃に大阪のテレビの音が聞けた場所であれば、関西のワイドFMを聞くことができるでしょう。

 まだ実際に送信アンテナ構成などがどうなるかにもよりますから、過度な期待は禁物ですが、かつて使っていたアナログのVHFアンテナを大阪に向けると、来春からは名古屋でもMBSラジオ、ABCラジオ、ラジオ大阪がステレオ高音質で聞けるかもしれません。三重県あたりはバッチリでしょうね。

 ただ…、そうなったら、FM802やfm osakaが不憫すぎますよね…。あ、まあ、802はCOCOLOも持ってるからいいでしょうけど、fm osaka…。

Panasonic FM/AM 2バンドラジオ シルバー RF-U150A-S

ワイドFMを聞くためには、
90MHz以上が聞けるラジオが必要です。

この記事を書いた人

TOPPY/川合登志和

記事や脚本を書いたり、名古屋のラジオやテレビの構成作家をしたり出演したり、地域のFMラジオで喋ったりディレクターしたりミキサーしたり、講師したり、サイト作ったりしてます。

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コメント

  1. くどやまかぼす より:

    いつも興味深くブログを拝見してます!
    ワイドFMの送信アンテナは、ABCやMBSは既存の自社テレビ送信所に付けられますが、OBCの場合はやはり提携関係にある関西テレビ(KTV) のアンテナに間借りする形になるんでしょうね。
    難聴取対策はありがたいですが、今回のワイドFM政策が既存AM局の財政的負担にならないことを祈ります。

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