70年代への郷愁-ど根性ガエル

私は70年代に特別な想いを抱いています。70年代に製作された特にテレビ番組に触れると、何かこみ上げてくるものがあります。私が生まれたのは1975(S50)年。5年近くは70年代の日本にいたことになりますが、記憶があるのはほんのわずかです。でも70年代を体感していたのは確かです。今思うと、あの頃の日本は本当に心が豊かでいい時代だったんだなあと感じます。

かつては夕方のテレビといえば、アニメの再放送の時間でした。70年代に作られたアニメでも、80年代以降に放送されたことも多く、私は数多くの70年代アニメに触れてきました。その中で今回お話するのは1972(S47)年から1974(S49)年まで、朝日放送製作・TBS系列で土曜夜7時に放送されていた「ど根性ガエル」です。

※当時朝日放送はTBS系列でした

数年前、大鵬薬品「ソルマック」のCMでキャラクター達が登場し、当時のアニメ自体もDVD化されました。CMでは主役のひろしが30歳にして京子ちゃんと結婚し、私は少し衝撃を受けました。ちなみに放送当時中学2年生だったひろしは、計算すると現在49歳ではなくてはならないのですが、リアリティーを求めるとCMが成り立ちませんので、それはこの際見逃しましょう。

私は70年代の何に魅力を感じるのか。それはアニメに限らず、本物志向を感じることができるからです。当時はアニメの音楽ひとつとっても生演奏ですし、テロップも写植や手書きです。当然お金や手間が今よりもかかっていたはずです。でもそれは意図的にやっていたわけではなく、当時はそうするしか手段が無かったのです。今はキーボードを叩けばすぐに済んでしまう作業に、当時はものすごい時間をかけて手間をかけて、丁寧に仕事をしていたのです。そこに妙に魅力を感じるのです。

「ど根性ガエル」は、カエルが生きたままシャツに張り付いてしまった主人公のひろしと、そのカエル・ピョン吉をとりまく人たちによる人情話です。カエルが張り付いたという設定以外、特にあっと驚く設定があるわけでもなく、東京の下町で繰り広げられるほのぼのとしたストーリーです。

しかしそこには今のアニメでは絶対に描かれることがないであろう、母子家庭や養護施設、いわゆる被差別地区などについてさらっと当たり前のように描かれていて、幼い頃、画一的で自分と同じ環境の人ばかりが住む新興住宅で暮らしていた私は、世の中にはいろいろな事情を抱えた人がいるということを、このアニメを通して知ったという側面もあります。

(その後父親の脱サラで我が家も画一から外れることになるのですが)

差別撤廃の名のもとに、今のテレビではそういった様々な事情について触れることは、腫れ物に触るかのような扱いをするようになってしまい、過剰な言葉の自主規制にも繋がっています。

しかし今、様々な事情を抱えた人がいなくなったわけではありません。差別の他に児童虐待など別の問題も発生しています。ところがそういった問題について学校では教えてくれませんし、親も子にそれを教えることができません。現在も残る「差別」について、子どもに説明ができる親がどれだけいるというのでしょう。

話が少し逸れてしまいましたが、70年代のアニメにはとても人間臭さがあるのですよね。民放のアニメはもちろん収益を上げなければならないのですが、そんなお金のためじゃない何かを感じることができるのですよね。

もちろん少子化の影響は否定しませんが、アニメがマニアのものになり、そっちの相手をしたほうが儲かることから、一般的に心に残るアニメが少なくなっているのでしょう。だから今、この「ど根性ガエル」をはじめ、昔のアニメのDVD化がさかんに行われ、それを懐かしむ大人が高額にも関わらず買い求めているのでしょうね。

「ど根性ガエル」の最大の魅力は何かと問われたら、それは背景や街並みですね。70年代がズバリそのまま描かれています。あの頃の東京・下町に住んでみたいなぁ。でもそれは永遠に叶わぬ望み。

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