インターネットでラジオ放送を配信するサービス「radiko(ラジコ)」その特集記事が、10日付の中日新聞夕刊に掲載されていました。もっと早く取り上げたかったのですが、海外にいましたので、遅くなりました。
現在、radikoは放送の補完的役割であるため、放送エリアと同じようにエリアを区切ってのサービスとなっています。その「エリア制限」の撤廃の可能性をテーマにした記事で、とても興味深かった一方で、エリア制限の限界に記事では触れられていなかったので、その限界という面も含めて、記事を読み解いてみたいと思います。
記事をまとめてみます。
・ラジコは放送波を受信しにくい地域をカバーすることを主目的にスタート
・現在参加しているのは48局。春には全国の7割近くの局が参加予定
・東日本大震災を機に一時的にエリア制限を撤廃→利用者は30倍に
・エリア制限撤廃を求める声は根強い
→ラジオ放送のネット配信を歓迎する放送局は多く、予定も含め全国7割弱の局がこの春までにスタートすると。一方のリスナーは、一時的な「エリア制限撤去」を体感して、特例とはいえ、全国のラジオ局を聞くことができたことで、「やろうと思えばできるんだよね?」と、思ってるわけですね。
・ラジオの広告費は20年前の半分まで落ち込んでいる
・東京のJ-WAVE「(エリア制限解除は)前向きに考えるべきだ」
・東海ラジオ「制限解除はあまりにも唐突で想定外」
・ZIP-FM「ラジコで聴取率が急上昇した実感は無い」
→ラジコの登場により、聞く人が増えたという統計はあるものの、それが現状、広告収入の増加には繋がっていないのが現実のよう。もともと、全国配信を視野に制作力のある東京の局は、エリア撤廃により全国拡大することで、収入アップを想定でき歓迎している一方で、地方局は思考停止状態。
・ZIP-FM「月額40万円強のラジコへの負担」
→どういう内訳なのかはわからないものの、愛知・三重・岐阜の東海3県エリアにラジコで配信しているZIP-FMは、毎月40万円強の負担金をラジコに払っているとのこと。この数字はとても興味深いですね。ラジコの配信対象地域になっているのに、配信していない局、たとえばRadio80岐阜FMや、FM NORTH WAVE、FM鹿児島などが、参加しない理由は、これなわけですね。
きっと、エリアの広さによって、負担金も変わるのでしょう。最初は兵庫県だけだったラジオ関西が、途中から大阪府にも拡げたり、同じ兵庫県域のKiss-FM神戸が、最初から関西全域に拡げられていることも、この負担金との兼ね合いがあったからでしょう。
・anとドコモに月額315円でエリア外含め全FM局が聞けるサービスも
・ラジコの社長の発言として「ラジコのエリア制限撤廃は不可能」
・一方で「将来、環境が整えば、ラジコとは別の有料サービスとして
検討してもいいのではないか」
この記事を読んでわかることは、前から言われている通り、ラジコのエリア制限は、あくまでも「ビジネスモデルを守るため」だけのものであり、エリア制限撤廃は「やろうと思えばできる」ということ。しかも、ラジコのエリア制限は放送の補完を建前としている一方で、本来の免許上の放送エリアとは関係ないということ。
免許上は岐阜県だけがエリアの岐阜放送も、免許上は愛知県だけがエリアのFM AICHI、ZIP-FMも、毎月のお金さえ積めば、東海3県に配信できるというわけです。そしてもうひとつ、この記事では触れられていない最大の問題は、インターネットには都道府県境が無いということ。どれだけ、radikoが専門会社と提携して、接続元の都道府県を割り出す技術を積み上げても、絶対に100%にはならないわけです。
このように、愛知県にいても、スマートフォンでは地元局が聞ける一方で、パソコンでは東京のラジオ局が聞けるということも起こるのです。仮に、エリア外の局を有料できけるサービスを始めるとしても、ラジコのエリア制限撤廃でなく、別の有料サービスで検討という方向なのは、この点も理由として挙げられると思います。
エリア判定が100%でないのに、エリア外のラジオ局を聞くことができるサービスを有料で始めるなんてできませんものね。この記事の結びは、「制限撤廃が『想定外』と言える日はそう長くないかもしれない。」となっていました。
段階は踏むことになるとは思いますが、いったん、ラジオ放送をインターネットに乗せてしまった以上、地域でラジオの利権を仕切るというビジネスモデルは、感情面でも技術面でも、もたないでしょうね。というわけで、この記事で一番安心したのは、ラジコのエリア外聴取を有料化するプランは全くないということ。つまり、ラジコのエリア外の局を聞くことができる「方法」が、ラジコに損害を与えるという図式にはならないということです。今のところはですね。
コメント
我が家でも、実家のPCは地元局なのに
自宅のPCは大阪の局が聞けますからね(笑)
「地域免許制」なんてのは時代にそぐわない世の中に
なっているのに法律が追いついてないんですよね・・・
>1970JJさま こんばんは
本文中にも書いていますとおり、
radikoのエリア制限というのは放送免許とは一切関係の無い、
業界のビジネスモデルを守るためだけのものなのですよ。
なので、法律はあくまでも電波だけの話ですよ~。
ラジオ局側から考えた場合、インターネットに載せて聴取率が上がったところで広告収入にまったく影響がない(というか、影響があるような計算方法をしていない)が故に、全面解禁について慎重になるのはやむを得ないと思います。
ラジオが電波で届けられる、というメリットがクローズアップされたのが東日本大震災でした。もちろん、テレビもワンセグで携帯電話で受信できたわけですが、映像だと電池の持ちがはるかに悪いわけです。その辺のメリットを生かせるようなラジオならではのビジネスモデルが提供できれば、ラジオは今後も生きるのかなー、と漠然と考えています。
お久しぶりです。
このradikoの問題、かなり燻ってるみたいですねぇ……。
そもそも、“ネット配信”はオンラインで、ラジオ&テレビの電波の飛ぶ範囲とは無関係。
だから、番組編成の扱い方をキチンと決めるべきなんですがねぇ。
それが出来ていないから、こんな中途半端に燻る事になるんでしょうに。
前に、
「ネット配信を主力にし、それを地上波に“お裾分け”するスタイルに改めるべきでは?」
――と、お話ししましたが、何れはそうなる気がしますね、この燻り方を見ていると……です。
CBCが、ラジオ放送の業務の大半を分離して“CBCラジオ”に移行し、“電波の送出”だけをCBC本体が受け持つ――と言う話がありましたが、radikoの行く末を考えた場合、理に叶う気がするのです。
“自社制作はネット配信をメインにし、地上波にお裾分け”
――と言うスタイルを実現するなら、CBCの手法が現実的と思うからです。
何れにせよ、今後の動きに注目ですね。
それでは、またです。。。(^ー^)ノ~~~~
>戸村賢一さま こんばんは
ツイッターではいつもお世話になっています。
これは、自分自身が長年、
AM難聴取エリアで暮らしてきたということに依るのでしょうが
どうもAM放送の電波に対して
「使えない」という印象が拭えないのです。
都市雑音やパソコンによって、さらにAMのノイズ源は増え、
radikoは自分にとっては「ラジオに帰る」きっかけになったと
言うことができます。
なので、radikoのようなオンラインサービスもいいのですが、
災害時のことを考えると、AM局の放送を、
FMでも並行するなど、電波でも確実に聞こえるように
して欲しいと思ってはいますが、現実的には難しいでしょうね…。
>Masayaさま こんばんは
それも、現実的には難しいでしょうね。
radikoに音声を乗せるための負担金でさえ、
渋って参加しない局があるというラジオ局の現状で、
ネット配信と電波での放送を切り分けるコストが、
捻出できる体力がある局は、数える程度だと思います。
CBCくらいの都市部の局で、しかもラ・テ兼営局ならでしょうが、
地方の単営局には、夢のような話かもしれません。
ご返事、有難うございます。。。<(_ _)>
確かに、CBCなどの大きい会社なら出来るだろうな――とは思いますね……。“分担金”の問題は大きいですしね。
でも、そこで“差”が出て来るのは、避けられないのでは?――とも思います。
“放送の在り方”を考える以上に“番組の内容”だったり“地域のフォロー”だったり、それが文字通り“生死”を分ける気がする為です。
それは、東京の文化放送が、分野ごとに“チャンネル”を作って運営しているやり方を見ていて、そう感じているのです。
名古屋であればドラゴンズがあったり、CBCさんなら『聞けば聞くほど』が、知る人ぞ知る存在だったり――やはり、“コンテンツ”だと思うのです。
そして、その“コンテンツ”に対する需要は、地元以外にも確実にある――とも感じるのです。
なので、都市部などの“出来る局”には、更に活発に動いて欲しいな――とも感じています。
ただ、地方局などの“出来ない局”も有る訳で――課題も大きいですよね。
その辺の“フォロー”も重要になるでしょうね。
何れにせよ、“一朝一夕”に進められる話では無いでしょうし……そこは、“待つ”しか無いんでしょうね。
そして。
ご結婚、おめでとうございます。。。(^○^)
末永く、お幸せに。
――となると。
お子さんが出来たら、どのポケモンが好きになるんでしょうかねぇ。。。(^▽^;)
人によって“好みのポケモン”が分かれるところが、『ポケモン』の持つ“奥行きの深さ”の所以ですからねぇ。
それでは、またです。。。(^ー^)ノ~~~~
J-WAVEに関しては、過去にBrandnew-Jのブランドネームで地上波の平日分の大半をネット配信していた実績があります。
しかし技術面では良いとしても、営業面でCM収入等が上手くいかなかったのか、もうやめてしまったので、ネットの部分にビジネスを期待しないほうがいいかと。それが自前のネット配信に消極的な局が多い要因なのでは。
ちなみに現在あるネット専門ラジオで商業的に上手くいっていそうな局といえば、文化放送のA&Gぐらいでしょう。
ていうか、もう1,2局地上波局が潰れてしまえばいい。そうすれば嫌でも動かざるを得なくなるでしょう。
>Masayaさま コメントありがとうございます。
ネットとラジオの融合は始まったばかりですから、
今後それがどのような作用を、逆に副作用を起こすのかは、
じわじわと反応していくことでしょうね。
ひょっとしたら、とんでもないことが起こるかもしれませんし、
何も起きずに変わらぬまましぼんでいくのかもしれません。
時代の変わり目であることは確かですから、
放送マニアとしては、その転換期を見つめて、
楽しみたいと思います。
変わりまして、祝いのお言葉ありがとうございます。
まだ、子どもの予定はありませんが、
もし縁あって授かりましたら、
まずはポケモンそのものを好きになってくれるかどうかが…問題です(笑。
今後ともよろしくお願いいたします。
>katsuさま コメントありがとうございます。
お金にならないという部分に加えて、
ラジオ局単独でのネット展開はハードルが高いというのも
ありますよね。
南海放送がかなりチャレンジャーなネット参入をしましたが、
後に続く局はありませんね。
潰れて消滅するラジオ局は、今後も出ないと思いますよ。
RADIO-iをきっかけにしたようなタイミングで法改正があって、
潰れる前に既存局への免許継承という形で、
会社は潰れても電波は残るという形に今後は変わっていくようですから。
具体例として、FM COCOLOは間もなく清算されますが、
電波はFM802に事業継承されますからね…。
正直申し上げまして、今回の記事を読ませていただくまで、
具体的な負担金を知りませんでした。
単純に3県で40万円強ということは、
近畿ですと2府4県を負担した場合は、
最低でも毎月80万円以上の負担金が
生ずることになるわけで、
キー局や準キー局は、ひょっとしたら、
もう少し単価が高いかもわからない、となれば、
ますます負担金が大きくなる訳でして・・・。
それだけに個人的には、すでにご指摘されていたように、
我が地元のKiss-FMが、
なぜ近畿一円をカバーしようとしたのか、
そして今現に、なぜこれだけのエリアをカバー
しているのか、これが最大の疑問です。
ラジオ関西の場合、独立局で、他のAM局と違った
独自路線的な部分が大きいですが、
正直現在目新しい番組がある訳でもなく、
ジリ貧状態が続く中での、大阪府へのエリア拡大に、
どれだけの効果があるのかも、確かに疑問は残りますが、
どちらにせよ、まずは聞いてもらうことが
大切でしょうから、その部分を取っ掛かりにして、
聴取者を増やす、という方法は間違いではないと思いますし、そこから枝が分かれればいいのでは、とも思います。
>とくながさま コメントありがとうございます
春からradikoは、
全都道府県でサービスを開始することになりましたから、
この時点で乗っからない局は、
何かしらの理由があって乗っからないということになりますね。
それが、負担金なのか、エリアの問題なのかは、
各局それぞれ違う理由なのでしょうけれども。
radikoに参加したからといって、
利益につながらないというのが現状ですから、
今後、儲かる仕組みをいかにして…というところでしょうね。
三重県伊勢市在住のものですが、ネットは、UQ WiMAXを契約しています。
ラジコのエリア判定なんですが、
PCは、東京判定で13局、iPodtouchは、三重判定で9局。
ラジオNIKKEIと放送大学はダブルので、合計19局聴けています。嬉しい誤算。
通常だとまともに聴けるのは、NHKFMとFM三重の2局なので大満足です。
(AMは雑音が酷い、ZIPFMとFM愛知はマルチパスでシュルシュル音が耳障り)
iPodtouchは、ミニコンポのチューナ代わりに常時接続しています。
今後、ミニコンポのAM/FMチューナを使うことはないでしょうね
WiMAXが契約者を増やしているのは、ラジコのエリア誤判定もあるのかな?と思っています。
>伊勢市在住さま コメントありがとうございます
誤判定といいますか、
そもそもIPアドレスで判定すること自体が、
地方局説得の建前であって、
無理なことは最初からわかっていたことだと思います。
さすがにもう、radikoをやめるということは
無いと思いますが、着地点はどうなっていくのか、
AMのFM化とあわせて注目し続けていきたいと思います。