一発屋にならないために…ショップジャパンの社長の一冊

150527

ロングセラーを呼ぶマーケティング(幻冬舎)

テレビ通販で勝ち残ったショップジャパン

 テレビショッピングというもの自体は昔からありますが、かつて昭和50年代は、あくまでも「ちょっと長いCM」というタイプのモノがほとんどでした。名古屋でもよく見かけたのは、日本文化センター、日本直販、二光通販、アルインコテレビショッピング、そしてセンテック通販といったところでしょうか。

 それが昭和の末期になると、いわゆる「通販番組」という、30分や60分のインフォマーシャルが登場するようになります。最初期は、NTC日本テレショップセンター、日本橋日美テレビショッピング、日本直販の番組が放送され、新たな時代を迎えました。

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今も残っているのは…

 ところが当時は、通販に30分や60分の放送枠を売るテレビ局というのは限られていて、普通の放送時間帯に流れていたのはいわゆる独立U局くらいなもので、ネット局では深夜の奥深い時間でしか流せないというのが普通でした。

 そんな深夜帯を開拓したのが、三井物産の「テレ・コンワールド」、「オークローンマーケティング」、「ジャパネットたかた」、住友商事の「住商ホームショッピング」です。

 テレ・コンワールドは現在「QVCジャパン」となり、オークローンマーケティングは現在「ショップジャパン」ブランドとなり、そしてジャパネットたかたは今もあり、住商は「ジュピターショップチャンネル」を運営しています。

 通販新聞の調査による、2013年6月から2014年5月までの1年間の、テレビショッピング売上高の順位を見てみますと…。

 1位ジュピターショップチャンネル
 2位QVCジャパン
 3位ジャパネットたかた
 4位オークローンマーケティング
 5位テレビショッピング研究所

 と、90年代初頭に、深夜帯を開拓して通販番組を流した会社が上位を占めています。ちなみに、関係は辿れませんでしたが、5位のテレビショッピング研究所の「ダイレクトテレショップ」は、かつての「日本橋日美テレショップ」と同じ売り子さんや「社長さん」が登場しますので、直系ではないものの、その系統といえるでしょう。

ビリーズブートキャンプの日本での売り方は失敗だったと断言

 そんな、「通販番組」型の成功者のひとつである「ショップジャパン」ブランドを展開する、オークローンマーケティングの代表、ハリー・A・ヒルさんが書かれた本、「ロングセラーを呼ぶマーケティング」を読みました。

 かつては、名古屋の2つの通販ブランド「ショップジャパン」と「プライムショッピング」はライバル関係にあり、ほぼ同じような売上規模だったのですが、ショップジャパンが一気に伸びたのがあれです。「ビリーズブートキャンプ」。

 傍から見ると、ビリーズブートキャンプのおかげでショップジャパンは有名になったという印象がありますが、ヒル社長は、ビリーズブートキャンプという商品自体は確かによかったものの、その、日本でのショップジャパンの展開の仕方が大失敗だったと断言します。

 その反省から、一発屋にならないために、ショップジャパンが何をどう戦略を練っているのか、事細かに書かれています。

 これは、通販に限ったことでもありませんし、企業に限ったことでもありません。

 例えばブログでも、ひとつの記事がバズって評判になったところで…
 例えばツイッターでも、ひとつのツイートが猛烈にリツイートされたところで…
 例えばフェイスブックでも、ひとつの書き込みが凄い勢いでシェアされたところで…

 一発屋は一発屋でしかなく、それは先に続かないのです。

 そうならないためには!

失敗もたくさんあっていい

 この本には、ショップジャパンが「かつてやっていたけどやめたこと」も触れられています。失敗もあって当たり前だけど、その失敗を未来にどう生かすか、そのまま失敗で終わってはいけないわけです。

 本には書かれていませんでしたが、オークローンマーケティングは一時期、「ショップジャパン」「ヒルズダイエット」「エクサボディ」という3ブランド体制にしたことがありましたが、すぐにやめました。また、愛知県のキリオというショッピングセンターに直営店を出したことがありましたが、こちらもすぐにやめました。

 失敗したときの、引きが早いんですよね。

 さらには、ヒットの秘密はコールセンターにあるという社長の言葉。そのとおりですよね!

 私が就職活動のときに受けた通販会社で、「興味のある部門は?」と聞かれて、「コールセンター」と答えた際に、鼻で笑って軽くスルーしてくれたところがありましたが、今はもうその会社、どうなったんでしょうねえ??ふん(鼻で笑っています)。

 マーケティングの指南書としてはもちろん、通販好きとしても読み応えのある一冊です。

この記事を書いた人

TOPPY/川合登志和

記事や脚本を書いたり、名古屋のラジオやテレビの構成作家をしたり出演したり、地域のFMラジオで喋ったりディレクターしたりミキサーしたり、講師したり、サイト作ったりしてます。

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