コミュニティFM出力増強・第一弾の思惑?

写真
写真:台湾から沖縄方面を望む

突然ですが、我が国には「コミュニティ放送」という制度があります。これは、それまでの都道府県を単位とした放送局とは別に、主に市区町村を単位としたFMラジオ放送局を開局できるようにと設けられたもので、

この地方ですと、

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愛知県:名古屋市東区・瀬戸市・犬山市・東海市・豊橋市・岡崎市・豊田市・刈谷市
岐阜県:岐阜市・多治見市・高山市
三重県:四日市市・鈴鹿市・名張市

東海3県に、14の放送局があります。しかし、市区町村を単位とする規模の小さな放送局であるがゆえに、経営環境は厳しいところも多く、中区・中村区・可児市では放送局が消滅しています。

また四日市も、地元ケーブルテレビによる救済合併の話が出ています。既存の、都道府県を単位とする放送局の出力が10kw(10,000w)や1kw(1,000w)であるのに対し、コミュニティ放送の出力は当初、1w以下に抑えられていました。

その後、規制緩和により、1995(H7)年に10w以下、1999(H11)年には20w以下と、出力の制限が緩和され、東海3県でも、14局中12局が、制度下最大となる20wの出力で放送を行っています。

時は流れ、平成の大合併により、自治体の面積は大きくなる一方となりました。そこで、コミュニティFMの出力制限をさらに緩和するという方向で進んでいるという話がちらほらと出始め、先月24日、その「20w」の殻を打ち破った予備免許が、総務省沖縄総合通信事務所から交付されました。

久米島町のコミュニティ放送局に予備免許(総務省沖縄総合通信事務所)

報道資料によりますと、免許を交付されたのは「FM久米島」で周波数89.7MHz、出力は「80w」です。既存局の出力増強としては、北海道稚内市のFMわっぴ~に50w化の認可が先におりていますが、新局としては、初の20w超えとなります。

これまで、1wが10w、10wが20wと、少しずつ規制が緩和されてきた経緯に比べると、
この80wという数字はかなり大きく感じます。しかも、最大実効ふく射電力(ERP)は149wにもなります。久米島は、それほどまでに出力を強くしないと、島全体をカバーできないのかな?と思ったのですが、調べれば調べるほど、どうしてもこの高出力の理由がわからないのです。

<NHKは10wでカバーしている>

まず、この久米島にある他の放送局を見てみますと、NHK-FMがありまして、その出力は「10w」なのです。あの、日本全国にあまねく放送を届ける義務のある、NHKが、久米島をカバーするのに必要だと判断された出力が「10w」。

ということは、10wで久米島全体をカバーすることが可能なはずなのです。しかも、NHK-FM久米島の最大実効ふく射電力(ERP)は10.5wなのに、今回FM久米島に交付された予備免許の出力は「80w」。最大実効ふく射電力(ERP)は149w。NHKが10.5wなのに、コミュニティ放送が149w。NHKの8倍の出力。NHKの14倍以上の最大実効ふく射電力なのです。その必要性は一体…。

<カバーしているのは海ばかり>

では、実際にFM久米島の電波はどのように飛ぶと想定されているのか、総務省が発表した地図を見てみますと…。

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これは一体どういうことでしょう。久米島を完全にカバーしているのはいいとして、それ以外の、海のエリアが広大です。むしろ、海をカバーするための80wということでしょうか。海をカバーするために、コミュニティ放送新局初となる、20wを越える出力免許を付与…。やっぱり、腑に落ちません。

<西にあるのは…>

このエリア図で、もうひとつ気になることがあります。それは、西側のエリアが描かれていないということ。わざわざ、久米島を地図の中央より左側に配置し、西側をカットするような地図になっています。

久米島の西に何があるのかといいますと、そう、それは、あの中国漁船衝突事件の起きた尖閣諸島。日本と中国、そして台湾がその領有権を争っている地域です。久米島から尖閣諸島まで、距離はかなりありますが、障害物の無い海ですから、電波の飛びは抜群です。この、FM久米島に予備免許が交付されたのが、先月24日。その約1週間後、こんなニュースも流れました。

【産経新聞】離島に命名 尖閣諸島の有人化を急げ

日本政府は尖閣諸島の島々に名前をつけ、国土地理院の地図に掲載することで、日本の領土であることを既成事実化するという作戦に出たのです。これらのことから、タイミング的にも、FM久米島に、コミュニティ放送史上初となる、80wもの高出力を付与したのは、久米島を隅々までカバーするという目的ではなく、実は、尖閣諸島を日本の放送エリア内に収めるという、政治的な思惑があってのことではないでしょうか。

コミュニティ放送の大出力化、その新局第一弾となる放送局に与えられた使命は、実はとてつもなく大きなものなのかもしれません。まあ、あくまでも勝手な想像ですけど。

日本人のための尖閣諸島史 (双葉新書)

でも、やっぱり久米島から尖閣諸島って、距離があるんだよね。尖閣諸島でFM久米島が聞こえるのかどうか、実際に行って確認してみたいよね。

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コメント

  1. katsu より:

    地上アナログTVなき今
    FM86MHz以上の周波数に余裕ができ、
    なおかつ合併で広がった自治体の面積を
    カバーする必要があるのならば
    尚更コミュニティ局の出力上限の緩和は
    必要でしょう。
    もはやコミュニティという小さい枠を捨て、
    準県域局というカテゴリーを作って
    商業面でもいけそうな放送エリアを
    認可させるべきだ、と思ったけれど
    既存の県域局の猛反発は避けられないでしょう。

  2. >katsuさま コメントありがとうございます
    気になるのが、その「86MHz以上」なんですよね。
    アナログテレビ1chがあった地域では使われず、
    アナログ放送が終わったら…と言われていましたが、
    実際には、まだ開放されていないんですよね。
    本当に使えるようになるのかが気になるところです。
    出力も大切ですが、
    これからのラジオは「稼げるかどうか」
    なのでしょうね。
    本州で一番大きな面積をカバーしていたFM局が、
    潰れて無くなってしまったのを目の当たりにしているので、
    出力だけじゃダメなんだな…とも思えます。

  3. あざとし より:

    その後稚内のFMわっぴーも出力50wとなりました。
    この地域も国境地帯。
    もしかして、意図は同じ?

  4. >あざとしさま コメントありがとうございます
    本文中に書いておりますとおり、
    FMわっぴ~の増力の方が久米島よりも先ですね。

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