ドリフの番組を見終わると…。

テレビの番組をワクワクして待つ。この気持ちを久しぶりに起こしてくれたのが、23日にフジテレビ系列放送された「40年だよドリフ大爆笑~祝ドリフ結成40年」でした。

幼い頃、ドリフ大爆笑は月に1回のお楽しみでしたが同時に、毎週土曜の夜が楽しみで楽しみで仕方ありませんでした。最高視聴率50.5%、番組平均視聴率が30.1%と、一世を風靡した「8時だョ!全員集合」(TBS)が終了したのが昭和60年9月ですから、私はその時小学4年生、ドリフのリアルタイムの世代としては最後の方だと思います。

私は「全員集合」に引導を渡した「オレたちひょうきん族」には一度も浮気することなく、全員集合を見続けました。あの頃私のクラスでは、「ドリフを見るのは子ども。」みたいな風潮があったのですが、私の選択は間違ってなかったと、今でも断言することができます。

ビデオデッキが我が家にやってきたのは結構遅く、昭和63年でした。それでもこの時親が買ってくれたことを今でも感謝しています。そのお陰で、平成元年以降に放送された「全員集合スペシャル」をいくつか残しておくことができたのですから。

これらのビデオは今見ても、笑いは衰えることなく、何度も見返してしまいます。私の相方はもう少し年下なので、リアルタイムの全員集合はほとんど記憶に無いのですが、このビデオを見て、笑いが止まらないほどでした。

そんな全員集合が終わってしまった後、楽しみとして残ったのが「ドリフ大爆笑」でした。火曜ワイドスペシャルで月1回放送され、私は中でも、「もしもシリーズ」、「バカ兄弟」、そして音響効果を駆使したコントが大好きでした。「バカ兄弟」は小学生の頃、放送翌日クラスのみんなで真似をしたものでした。

また、平成6年頃だったか、かつて全員集合でやっていた公開スタイルの商店街コントなどが復活したときは、腹を抱えて笑いました。

この「ドリフ大爆笑」は、CS(有料)では再放送されているようですが、地上波では久々の登場ということで、今回も笑えそうだな。と思ってチャンネルを合わせたのですが、見終わって不思議な気持ちになってしまい、少し目が潤んでしまいました。

番組のオープニングは、20年間変更されておらず、今回20年ぶりに新しく撮影されました。さすがに20年という月日はこれほど人を変えてしまうのか、と思うほどメンバーの姿は変わっていました。見ている私も、小学2年生がもうすぐ三十路になっているのですから、当たり前です。

内容は、メンバー5人が選んだコントということで、次々と紹介されていったのですが、その場面にいかりや長さんの姿はありませんでした。オープニングで歌っている場面も、あまり元気な様子ではありませんでした。長さんは今年、体調不良を理由にドラマを降板しており、入院もされています。番組上は、他の営業が忙しいと、メンバーは笑って言っていましたが、やはり今回も体調不良なのでしょうか。

そして、4人がそれぞれ選んだコントが放送されました。ドリフ大爆笑の特徴のひとつであった、独特な手書きのテロップは姿を消し、機械的な字になってはいたものの、ほとんど当時のままのスタイルで、CMを変なところに挟むことなく、まるで昔のビデオを見ているかのような錯覚に陥りました。

ここ最近のドリフ大爆笑は、年に1回あるか無いかという周期で放送されていたのですが、いつもビデオの編集のみでした。今回、メンバーが勢揃い(と言っても歌の場面以外は4人でしたが)して、番組を進行していくというスタイルが、嬉しいと同時に何か、今回が特別な様な気がしてなりませんでした。それが「40年」だから、ならば良いのですが…。

そして後半は、長さんが選んだコントと言うことで、昭和50年10月7日に放送された「ドリフの昭和大爆進!笑いと唄の50年」が、ほとんど当時のまま流れました。昔の番組を流す時に良くあることなのですが、当時のテロップは縁取りが無いために見難く、ボカして消して、今のテロップを上から乗せるということがあるのですが、そう言うことも全くありませんでした。

他にも、昔の番組を紹介する時にこういった演出をすることがあります。例えば古いアニメの名シーンを流す時、説明のテロップをその上から乗せたり、面白いところを繰り返したり、ナレーションで説明を入れたり…。こういうことをされると、本当に興ざめしてしまいます。また、当時は良かったものの、今では自主規制から放送できないということも多いと言います。

今回、この「昭和大爆進」には、クレイジーキャッツやキャンディーズ、天地総子さんなども出演しており、権利関係もよくクリアできたなー、と思えるものでした。ドリフターズの生演奏コントもあり、知識としてはあったものの、私のドリフと言えば全員集合以降のコントがほとんどなので、こういう映像を見られたことはとても嬉しかったです。考えてみれば、この番組が放送されていたときには、私はまだこの世に存在していないのですから。

内容も、酋長の娘という唄を基にしたものや、軍隊コント、戦後間もなくのNHKのど自慢で歌う元兵士が、異国の同胞を思い出して泣くといったものなど、とてもノスタルジックなものでした。そう言えば、私が小さい頃はまだ、戦後という香りが少し残っていました。私の親も「戦争を知らない~」世代ですが、フォークソングや、はだしのゲンなどから、幼い私は戦後の空気を感じ取っていました。

ドリフターズのコントには、風刺がすごく利いていたんだな、と改めて感じることができました。今のお笑いも私は好きで良く見ますが、社会風刺を織り込んだものと言うのは皆無に等しいのではないでしょうか。それをできる人がいなくなってしまったのか、様々な圧力から、テレビという媒体では風刺そのものができなくなってしまったのか…。折りしも日本人は今、戦争に行きます。

今日のドリフ大爆笑を見て、あの頃のテレビは本当に良かったな、と感じると同時に、もうテレビはあの頃の様な存在に戻ることはできないということが、はっきりとわかりました。今回この映像が放送されたことも奇跡に近いのかもしれません。変なCM跨ぎや誘導テロップも無かったことも含めてです。

今回、フィナーレも新たに撮り直されていました。番組の冒頭から、一言も長さんの声は聞くことができませんでした。しかし、フィナーレでは最後に、長さんがいつものセリフを言うはず…と思っていましたが、結局その部分のセリフは無く、最後まで長さんの声は聞くことができませんでした。

「次の回も一生懸命頑張ります。ごきげんよう!」

このセリフをカットするために、撮り直したのでしょうか。今回が最後なのでしょうか。幼い頃、全員集合を見終わった時のあの寂しいような、せつない感覚が、再び心の中に戻ってきました。

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