高級な名古屋名物!みそ煮込みうどんとあのラーメン

少し前の話になるのですが、昨年秋のことです。ふと、味噌煮込みうどんが食べたいなと思い、「名古屋で味噌煮込みと言えばあそこだ!」ということで、山本屋本店へ行くことにしました。

「山本屋ってどこにあったっけなー。」と記憶をたどると、名東区の高針、名古屋三越栄本店が思い浮かんできたのですが、「行ったこと無いところに行ってみよう、どこかあったっけな。」とさらに記憶をたどると、「そういえば錦で見かけたなぁ。」と思い出しました。


▲錦の山本屋本店。外観からしても和食屋さんには見えない…。

この時点て気づかなければいけなかったのです。錦という場所が何を意味するのか…。

早速相方と錦へ向かい、「山本屋本店」の暖簾をくぐりました。ものすごく接客が丁寧で、雰囲気も「ここは洋食屋さんですか?」という綺麗な店内。「何か様子が違うなぁ。」と案内された席に座ると、店員さんがメニューを持ってきました。

メニューを見ると、そこには各種コース料理が載っていました。「へぇ、味噌煮込みにコース料理なんてあるんだぁ。」と感心していたのですが、めくってもめくってもメニューはコースばかり、どこにも定食ものが載っていません。

しかも最後のページには、味噌煮込み単品と思われる「昼のお献立¥1,900」の文字が…。

「何?これは?」と相方のほうを見ると、同じような表情をしています。目で素早く会話し、とりあえず店員を追いやることに。

「ちょっと待ってください。」店員さんが離れて行くや否や、「これ何か違うんじゃない?」「他に定食とかのメニューがあるんじゃないの?」「いや、単品が載ってるし、これがメニューの全てだろう。」と、何とも見苦しい会話。

それもそのはず、名古屋で一般的に味噌煮込みうどんと言ったら、山本屋だとしても大抵単品は700~1,200円。定食にしてもせいぜい1,500円くらいの価格のはずなのです。しかもここは「山本屋」です。知らない店ではありません。しかし単品が1,900円とは…。

だからといって、ふたりで単品ふたつというのは、いかにも「知らずに間違って入っちゃいました。」と言うようなものです。こういうとき、そう見られたくないのが典型的名古屋人思想なのです。

そこで、一番安いコースを注文することにしました。価格はひとり3,600円。味噌煮込みに3,600円です。でも、さすがコース料理。

なすのおひたしから、伊勢芋のとろろ、焼きしいたけのえび添え、飛騨牛のタタキ…と、いろいろなものが運ばれてきます。どれも美味しい。味噌煮込みを食べにきたことを忘れさせるほどの美味しさでした。しかしもちろん、最後のシメは味噌煮込み。お腹は大満足でしたが…。

「お会計7,560円になります。」

しばらく外食はおあずけとなりました。

それでも私たちは幸運だったのです。なぜならそれはお昼だったからです。そう、3,600円はランチコースだったのです。もし夜入っていたらと思うと…、熱い味噌煮込みを食べたから、というわけではない汗が、背中をつたって行きました。


▲看板は普通に「山本屋本店」なんだよね…。

錦というのは、高級スナックや料理店が立ち並ぶ、東京で言えば銀座のような場所です。銀座では、同じ食べ物でも価格が全然違うように、名古屋でも錦では味噌煮込みの値段が違っていたわけです。

でも同じ「山本屋本店」の看板なんだもんな。「高級!」とかそう言った文字を入れていただきたい。この店を、味噌煮込み界の「地雷店」に認定します。

そして、つい先日。またしても高級名古屋名物店を発見しました。今度はラ
ーメンです。「名古屋に名物ラーメンなんてあるの?名古屋ラーメンなんて聞いたことないよ。」と言われるかもしれませんが、名古屋人なら誰でも食べたことのあるのが「スガキヤラーメン」です。

「名古屋だから赤味噌ラーメン?」と思われるかもしれませんが、そうではなく、この「スガキヤ」、何とも言えない独特な「とんこつラーメン」が名物となっています。

そんなスガキヤの高級店を発見したのです。栄のナディアパークの南に筆調の文字で書かれた「寿がきや」の暖簾を掲げる店を発見しました。これを見た瞬間、学習能力のある私達はピンと来ました。

「これは、スガキヤの地雷店だな…。」と。

しかし、この店は山本屋の地雷店と違い、メニューを店先に掲げていました。興味津々でその看板を見ると…。

「やっぱり高い!」

なんと、ラーメン一杯が550円もするのです!

「…」

今、名古屋人以外の方は「どういうこと?」と思われたかもしれませんね。「1杯550円のどこが高いの?」とお思いでしょう。しかし名古屋人は「うわ、高―。」と思っていただけたことでしょう。

と言いますのも、通常スガキヤのラーメンは、一杯270円なのです。この「寿がきや」は通常の倍の価格設定なのです。ほら、高いでしょ?驚いたでしょ?というか、270円の安さのほうに驚かれたでしょうか?

ここで入ろうかどうか迷ったのですが、栄周辺にはたくさんの「スガキヤ」の店舗があります。550円も出せば、特製チャーシュー5枚と玉子の入った「特製ラーメン」と「ソフトクリーム」を食べてもおつりが50円戻ってきます。

「やっぱり普通のスガキヤ行こっ。」

と、結局普通のスガキヤで、特製ラーメンセットを食べたのでありました。あの、「寿がきや」、メニューが店先に無かったら入っていたかもしれません。確かにスガキヤの高級ラーメンには興味はあるのですが…。(のちに行きました

デフレのこの時代、少しでも付加価値をつけて、価格を上げたいというのが企業としての戦略なのでしょう。

この調子だと、そのうち「ウコッケイの高級手羽先」を出す風来坊の地雷店、「特選素材を使用した、ういろ」を出す、大須ういろの地雷店、「伊勢海老1尾を豪華に使った高級天むす」を出す、地雷屋の地雷店なんて店も登場するかもしれませんね。ん?地雷の地雷?

ただ、ケチで有名な名古屋人は、「寿がきや」を見過ごした私たちと同じように、そういう店にはなかなか入らないと思うので、名古屋へ来た、よその人がお金を落として行ってくれるでしょう。

しかし名古屋人は、ケチなくせに見栄っぱりなので、店先に値段を出さず、いつもと同じ看板で、とりあえず店に入れてしまい、高級味噌煮込みを注文させてしまう、という山本屋錦店の戦略は、見事に名古屋人心理をついた、計算されたものなのだと痛感しました。ぜひご賞味下さい。

この記事を書いた人

TOPPY/川合登志和

記事や脚本を書いたり、名古屋のラジオやテレビの構成作家をしたり出演したり、地域のFMラジオで喋ったりディレクターしたりミキサーしたり、講師したり、サイト作ったりしてます。

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