パソコンやスマートフォンなどから、インターネットを通して民放のラジオ放送を聴くことができる、IPサイマルラジオ「radiko」。今年3月より東京周辺(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)、大阪周辺(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県)にて、実用化試験が行われてきましたが、いよいよ本格運用化となりました。
それにより、名古屋でも…という話が出てきたのと同時に、放送とインターネットの矛盾も…。
トッピーネットでは以前、radikoの実用化試験が始まった際に、このような記事を書きました。
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これまで、地上波の電波を使ったラジオ放送というのは、基本的に都道府県ごとの免許の下、行われてきました。そのうち、一部のAM局にのみ、都道府県境を越えて、複数の県をカバーする免許が与えられてきました。
(FM山陰は過疎化の特例よる唯一のFMによる複数県カバーまた、外国語局は都市単位のエリアカバー)
そのため、ラジオというのは都道府県ごとの「利権」という側面もありました。しかし、インターネットの台頭、広告費削減、景気悪化のなかで、ラジオ自体に「利」がなくなり、利権が利権でなくなりつつありました。
そのため、ラジオの復権を目指し、インターネットでラジオ放送を流すという発想になったわけですが、そもそもインターネットには、厳密に都道府県を仕切るという技術が確立されておらず、また、radiko側も県単位ではなく、地方ブロック単位でのエリアカバーとする方針を採ったため、結果として、放送では、東京都だけをカバーするFM局、大阪府だけをカバーするFM局について、radikoでは周辺県でも聞けるという「越境」が発生しています。
そして、実用化です。
【朝日新聞】新会社radikoを12月1日に設立、IPサイマルラジオ放送が本格始動
記事によりますと、東京と大阪については、周辺県の局の参加も促すと同時に、東京エリアは1都6県へ、大阪エリアは2府4県へとエリアを拡大。これにより、たとえば、本来は東京都でしか聞けないはずのTOKYO FMが、同じ系列局であるFM群馬のある群馬県や、RADIO BERRYのある栃木県でも聞けるようになってしまいます。
さらに、来春を目処に名古屋、福岡、北海道へと、各エリアにあるラジオ局に参加の意思を確認したうえで、拡大していく予定とのこと。
地域ごとの、かつてあった「ラジオ利権」をブロック単位で守る一方で、微妙に、自ら、放送エリアの崩壊を招いています。また、先日書きましたとおり、テレビ東京による番組のインターネット配信実験では、都道府県判別の実績がある会社に判別を外注しているのに対し、radikoは独自でやっているために、誤判定も多く、線引き自体が曖昧になっています。
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地上波民放ラジオ局のビジネスモデルを考えれば、エリアごとに仕切る論理もわかりますし、IPサイマルラジオは放送免許とは一切関係ないため、本来は県域でしか無い放送局を、広域で配信することも、全て、radikoを仕切る広告代理店の思うがままになるわけです。
理屈はわかります。ただ、一リスナーとして感じるのは…。免許の上では、市町村単位でしかエリアをカバーできない、小規模なコミュニティFM局が、「サイマルラジオ」としてインターネットでは全国配信できているのに、都道府県単位をエリアとしている、コミュニティFMよりも規模の大きな民放ラジオ局が、インターネットでは中途半端にエリアを仕切っているという状況に、違和感を拭うことはできません。
それに比べると、テレビ東京のインターネット配信実験は、「エリア外のうち、番組販売をしていない県にのみ配信する」と実に明確で、納得できるわけです。
私のような、もともとラジオが好きだった人や、放送局にこだわりのある人は、「番組」を選ぶ際に「どこの局の番組か」という要素が大きなウエイトを占めていると思いますが、インターネットで「検索」を知った世代はもう、何かを聞きたかったり、何か映像を見たかったりする際、選択するのは「番組」そのもの「映像」そのものという概念であって、「放送局」「チャンネル」ではないという次元に移行しつつあります。
radikoの登場により、かつてラジオを聞いていた人が、再びラジオに帰ってくるという可能性は非常に高いと思います。しかし、「放送局」そして「地域ごとのエリアわけ」というもはや、かつてのものになりつつあるビジネスモデルをインターネットに持ち込んだradikoが、ラジオに縁の無い、一般のネットユーザーにどれほど広まるのか、という点には疑問符を打たざるを得ません。
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「ラジオマニア」か…。なんだか聞いた話では、今の中高生の間では、CDを買うこと自体「マニア」らしいね。そんな世代では、やっぱり、ラジオを聴くこと自体が「マニア」なんじゃないかなぁ。
コメント
コミュニティFMのネット配信もそうですが、今やUストリームで、全国どころか全世界に番組を配信出来る時代。
現に、ABCラジオの「スポーツにピタっと」という番組をUストリームで、画像付きで配信をしています(一部BGMは著作権の問題でカットされてますが)。
従来のAMラジオだって、夜間になると、東京で、東海ラジオやABCラジオが受信出来ていましたが、それを防止する策なんて取りませんでしたよね。CBCラジオは、朝鮮語放送の電波が遙かに強く、受信出来ませんが・・・。
あえて、制限を設ける必要なんて、私はあるとは思えません。
radikoの可能性を、自ら萎ませる策を取って欲しくないですね・・・。
それにしても、CDを買うこと自体がマニアですかあ。
まあかなりCDを買っていた私でさえ、アルバムはともかくシングルは全く買わなくなったなあ。
個人的には、radikoでつボイさんの番組を聴いてみたい、
という希望はありますが、名古屋で導入されれば、どのような効果が出るでしょうか・・・?
近畿もようやく和歌山と滋賀でも運用が始まります。
これが聴取率にどう影響が出るかですね・・・。
こんばんは。
いよいよ本格稼動に向けて動き出しましたね。
でも、その気になれば「ニコニコ」とかでも見ることも聞くことも出来ますからね・・・法律云々を置いといての話ですけど。
>ネモッチさま こんばんは
まあ、正直言って、かつては相当なラジオ好きだった私も、
ラジオを聴く時間がさすがに減ってますね。
その分、動画サイトを見ている時間が増えたということになります。
楽しい通販は気になりませんが、
そうでない、いかにもなオチの無いパブリや通販が入ると、
思わずラジオを消してしまいます。
でも本当は、radikoをきっかけに、
まさに負のスパイラルに陥っているラジオが
復活することを、祈っています。
>とくながさま こんばんは
自分の場合は、
少なくとも、我が家ではどうにも綺麗に聞けないCBCラジオが
radikoで聞けるとなれば、聞きますね。
ただ、ラジオ離れの加速が激しい名古屋で、
一般の人にどれほどまで効果があるのかは…わかりませんね。
ただ、聴取率の数字に表れるほどの効果は…?
>tasuyaさま こんばんは
多くの人に聞いて欲しいけど、エリアを制限したい、
そんな自己矛盾を抱えて、歪な運営状況を作ってる限り、
もともとラジオに縁の無い人にまで広まることは無いでしょうね。
過去の番組も検索して自由に聞けるくらいまでやれば、
違ってくるとは思いますが。
お久しぶりです。
あの・・・FM山陰だけでなく山陰放送も例外に該当する気もします。
それを言い出すと、KBS滋賀やNBCラジオ佐賀はどうなるんだ、という声も聞こえてきそうですが。
>あざとしさま こんばんは
いえ、その前にAM局については、
「そのうち、一部のAM局にのみ、都道府県境を越えて、
複数の県をカバーする免許が与えられてきました。」
と、書いてますので…。
AM局以外で複数の県をカバーしているのは、
全国カバーの短波と都市単位の外国語局を除くと、
FM山陰だけですよね?
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。地デジ完全移行まであと半年となりましたが、完全移行後にはTVhの道東での放送がいよいよ開始となります。出来れば何とか長期の仕事を決めて、エコポイントがある3月末までには地デジテレビへ買い替えようと思っています。
さて、今回はradikoの件でちょっと思い出したことがありましたので、こちらに投稿させていただきます。このradikoは現在、首都圏と関西圏だけでの放送ですが、中京圏、福岡県、北海道ではぜひやって欲しいものの、とりわけ北海道は早い時期でサービスを開始して欲しいですねえ。
実は北海道では、ラジオに関してもTVh同様、電波格差の問題がありまして、直木賞作家の佐々木譲さんが住む中標津町では、3年前に地元電気店店長が、民放FM2局の釧路送信所の電波を受信して、さらにそれを違法送信・中継を行って捕まるという、前代未聞の大事件が起きているんですよ。
その中標津町は民放ラジオの中継局が全くなく、そのため町では何回も陳情を行ってきたものの、経営上の理由から開局が叶わなかったそうです。そんな中で違法送信・中継事件が起きてしまっただけに、事件発生直後に慌ててコミュニティ放送局を作って開局させるという事態にまでなったんです。
実は北海道は民放AM局があと5局あれば何とか100%カバーできるものの、FM局はAIR-G’で46局、NORTHWAVEで50局は必要になります。ただ、TVh同様各局とも経営が厳しいため、さらに、放送機器の更新もままならないため、なかなか開局出来ないのが現状だそうです。
そのような意味でも、radikoの北海道での早期サービス開始は絶対必要だと思います。もちろん、対象市町村の選定などでもめる可能性は恐らくあると思いますが、情報格差を少しでも解消していく意味でも、放送対象地域の100%カバーを実現していくことが大事なのではないでしょうか。
>歌姫LOVEさま こんばんは
ありましたね。AIR-G’の違法再送信。
あれがきっかけでコミュニティFM設立になったんですよね。
結果的に地元の方にとっては良かった、と、
言っていいのかどうかは迷うところですけど…。
Radikoは、インターネットなのに地域判別という、
所詮は100%判別は不可能な方法でやってるわけですから、
リスナーを信じて、エリアを自己申告で地域設定させるとかに
すればいいんじゃないですかねぇ。
こんばんは。
“Wikipedia”ではRadikoの実用化に向けた動きが「AMステレオ放送が普及・定着しなかった原因」の1つに挙げられていたりしますが、遂にTBSラジオがAMステレオの終了を発表しましたね。
1月31日(月)朝4時の放送開始からモノラルに切り替えるそうです。
以前MBSとABCが相次いでAMステレオを終了した時、TOPPYさんは「在名局はたぶん在阪局のことはあまり見てないと思うので、在京局の動きに左右されると思う」という様なことを仰っていたかと思いますが、在京局からもAMステレオ終了の動きが出てきたことで、在名局、特にTBSをキー局としているCBCの今後の行方が気に懸かるところですね。
>いちみ。 さま こんばんは
TBSラジオのAMステレオ終了は、突然発表された感がありましたね。
私はツイッターのRTで知りました。
ウィキペディアのに書かれている、放送に関する独自研究は、
関係者の話と全く異なっていることが多いので、
2ちゃんねるとかと同じ程度の信憑性しか無いと思いますが…。
そもそも、AMステレオが普及しなかったのは、
もう、90年代後半から、
AMラジオそのものが何かムーブメントを起こせる媒体では
なくなってきたということが一番大きな要因かと思います。
今や「新しいラジオを買おう!」と思う人が、
一般的にどれだけいるのかという…。
今、計画が進められているデジタルラジオも
「携帯電話で聞ける」「車で聞ける」
「携帯音楽プレーヤーで聞ける」をやらないと
同じ末路を辿るかと思います。
実際は逆じゃないでしょうかね。
Radikoでステレオ配信が可能になったことが、
AMステレオをやめるきっかけになったと。
ABCやMBSはそれが露骨でしたし。
なので、在名局も名古屋地区でのRadiko開始が次の山場な気がします。