さようならスピルオーバー

スピルオーバーとは、本来エリア外であるはずの放送局の電波が、それ以上に飛んでしまうことです。愛知県在住の私が、三重テレビを見られるのは、まさしくこのスピルオーバーのお陰なのです。

本来電波とは、行政が設定した、放送エリア内にしか飛ばしてはいけないことになっています。例えば、愛知県を放送対象区域としているテレビ愛知は、愛知県にしか電波を飛ばしてはいけません。しかし、濃尾平野は岐阜、三重の一部にも広がっており障害物がなく、また海の上はよく電波が飛ぶことから、岐阜県や三重県にも広く電波が飛んでしまいます。

行政は、なるべくそういうことのないように指導するものの、アンテナの角度などを制限することによって、逆に、愛知県内への電波の飛びが悪くなっては本末転倒なので、黙認している状態となっています。

昔は、行政もこのスピルオーバーに寛容だったらしく、兵庫県域のサンテレビは、大阪府を100%カバー(人口)していますし、京都府域のKBS京都テレビも、滋賀県のほとんどをカバーしています。

ところがです。関東・近畿・中京の広域圏で、今年12月にスタートする地上波デジタル放送。デジタル放送は、高規格な放送となるだけでなく、アナログの1/10の弱い電波でも映ります。そこで行政は、このデジタル化を機に、これらスピルオーバーを少なくし、本来のエリアに戻すという動きがあるのです。

ところで、私の住む愛知県で、スピルオーバーの代表格と言えば、愛知県を約85%(人口)カバーしている三重テレビです。専用ブースターも普通に売られており、中日戦中継があることから、広く受信されています。次に多いのが岐阜放送です。岐阜本局の電波の飛びはイマイチですが、中津川局が知多半島だけでなく、三重県方面でも受信されています。他にも大阪の生駒本局が、ノイズ・混信交じりではありますが、受信できます。

そして、ここ10年ほど前に開設され、突如スピルオーバーしだしたのが、長野県の浪合平谷中継局です。信越放送(15ch)、長野放送(17ch)、テレビ信州(19ch)、長野朝日放送(21ch)。たった10Wの出力なのですが、チャンネルが低いという点と、標高1,635mという高条件が重なり、こちらも知多半島、西三河、さらには三重県でも受信可能になりました。私の住む瀬戸市では、逆に送信所の標高が高すぎて、他の低い山が邪魔になってしまうのか、白黒で、かすかに画面が確認できるレベルでしか映りません。

長野の放送局は、名古屋ではネットされない、東京の番組の多くをネットしており、それらを見たい視聴者には重宝されました。ところがです。これだけ飛んでいることを、行政が確認してしまったのか。名古屋のデジタル放送への影響が懸念されるようになりました。名古屋のデジタル放送のチャンネル周波数は、NHK教育(13ch)、中部日本放送(18ch)、中京テレビ(19ch)、NHK総合(20ch)、東海テレビ(21ch)、名古屋テレビ(22ch)、テレビ愛知(23ch)と、この浪合平谷のアナログ放送と、チャンネルが被ってしまうため、混信が考えられるのです。

そのため、この浪合平谷中継局は(民放のみ・NHKは存続)、南方向(愛知県方面)への電波の発射は10月14日まで、そして中継局自体も来年3月をもって廃止されることとなりました。事情としては、デジタルへの混信ということになりますが、これは、アナログ時代のスピルオーバーという現象が消される第一歩。エリア外受信時代の終焉を象徴するできことではないでしょうか。

というわけで、この連休、この浪合平谷中継局に行ってきます。電波塔、そして長野県と言えばこの方、サンタ堀池さんも同行されるということで、細かな解説も期待できます。しかし標高1,635mって完全に登山ですね。しかも台風。自分がニュースの画面に乗って、この中継局から電波が発射されることのないように、気をつけたいと思います。

サンタ堀池さんのページ

http://member.nifty.ne.jp/santah/

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