29年ぶりの日本シリーズ

白熱しているプロ野球日本シリーズ、いよいよ今夜決着するわけですが、今日の第7戦は、テレビ東京系列とNHKのBS1で放送されます。結構話題になっていますが、テレビ東京が日本シリーズを放送するのは、1974(昭和49)年のロッテ×中日以来のことです。

今年の日本シリーズは、日本テレビ系列、TBS系列、テレビ朝日系列が各2試合ずつ、そしてテレビ東京系列が1試合となっています。放送するテレビ局というのは、どのように決まるのでしょうか。基本的にはゲームの主催チーム、甲子園なら阪神タイガース、福岡ドームならダイエーホークスが、テレビ局を推薦します。

今年の場合であれば、阪神が毎日放送(TBS系)、ABCテレビ(テレビ朝日系)、よみうりテレビ(日本テレビ系列)を、ダイエーがRKB毎日放送(TBS系)、九州朝日放送(テレビ朝日系)、福岡放送(日本テレビ系列)、そしてTVQ九州放送(テレビ東京系)を推薦したというわけです。ここでポイントなのが、球団が推薦するのは、「系列」ではなく、「地元テレビ局」なのです。

1974(昭和49)年、テレビ東京はロッテに推薦され、日本シリーズの中継権を獲得しました。当時、全く系列局を持たない独立局だったテレビ東京(当時は東京12チャンネル)は、他系列の地方局にネットをすることで、全国ネットで試合は放送されました。これはテレビ東京に限ったことではなく、当時系列局が少なかったテレビ朝日(当時はNETテレビ)で放送される場合も、他の系列局にネットをすることで、全国をカバーしていました。

ところが、時代は流れ、テレビ東京だけが、日本シリーズを放送できない環境ができあがってしまうのです。

日本シリーズを放送するテレビ局は、球団が推薦するのですが、決定するのは日本野球機構です。機構側からは、「全国90%以上で視聴できる環境」が条件として出されています。かつては、ネット局が少ない局でも、他系列局にネットをすることで、90%をカバーしていたわけです。

ところが、日本シリーズの試合が夜行われるようになると、各テレビ局とも、CMセールスの関係から、差し替えが容易にできなくなりました。たとえば日本テレビ系列の局が、ゴールデンタイムのいつもの番組を休止して、他の系列の番組を放送するというのは、簡単そうで、実はそうではありません。系列の縛り、スポンサーの縛りがあるわけです。こういった事情から、もともと複数のキー局をネットするクロスネット局を除いて、日本シリーズの系列外局へのネットはほとんど無くなってしまいました。

さて、ここで明暗が分かれるのですが、テレビ朝日はバブル期に、積極的に系列局を作り、今では日本テレビ、TBS、フジテレビとほとんど変わらないネットワークを作り上げました。しかし、テレビ東京は系列局ができたものの、全国の68.5%のカバーにとどまっています。

テレビ東京系列のTVQ九州放送は、毎年ダイエーの試合を30試合ほど中継しています。これは、福岡のテレビ局の中でもズバ抜けて多く、ダイエーファンの獲得に大いに貢献しています。ダイエーもそんなTVQに感謝していて、1999(平成11)年、ダイエーホークスが優勝し、TVQ九州放送(当時はTXN九州)を推薦したことがありました。

しかし、68.5%カバーという点がひっかかったのです。TVQとテレビ東京は、他系列の局にも呼びかけ、なんとか90%以上確保を、と頑張ったのですが、先程書きましたように、ゴールデンタイムの番組を、他系列に差し替えるというのは容易なことではありません。結局、約束を取り付けられたのは、系列に属さない独立UHF局だけで、テレビ東京系列と独立U局だけでは、90%カバーに至らず、このときは九州朝日放送(テレビ朝日系列)へと、権利は流れてしまいました。

「テレビ東京は、永久的に日本シリーズが放送できないのだろうか…。」

ところが、2001(H13)年、ふたたびダイエーが推薦を考えていることがわかりました。一度ダメだったものを再度出してきたのには、策があったのです。それは、NHKのBS(衛星放送)との並行放送です。地上波ではテレビ東京系列、そしてNHKのBSでも放送することで、90%の確保をめざしたのです。すると、野球機構がOKを出したのです。しかし、この年は近鉄が優勝し、ダイエーは優勝できなかったので、結局実現はしませんでした。

そして、2003(H15)年、ダイエーはTVQをふたたび推薦しました。そして、ダイエーは見事優勝。TVQ九州放送は日本シリーズの放映権を獲得したのです。が、それは第7戦。試合がもつれれば、優勝が決まる最終戦。とは言え、それまでに決着が着いてしまう確率が高く、試合があるかどうかわかりません。1994(H6)年、日本シリーズがナイトゲームになって以来、7戦までもつれたことはありません。

しかし、奇跡は起こりました。

今日、日本シリーズ「阪神×ダイエー」はテレビ東京系列と一部の独立U局、そしてNHK-BSにて放送されます。優勝決定戦をテレビ東京系列が放送するのです。ダイエーと、ダイエーを一緒に盛り上げてきたTVQ九州放送の晴れ舞台。このように、TVQは地道な努力で、ようやく日本シリーズの放送に漕ぎ着けたのです。決して、フジテレビの王監督侮辱事件による棚からぼた餅ではないのです。ただタイトルが普通に「NIPPON SERIES2003」で、「TVチャンピオンスペシャル、プロ野球日本一決定戦」でないのが残念です。(そりゃ無理だ)

29年ぶりですから、テレビ東京はかなり嬉しいと思うのですが、それを表に出さないのも、テレビ東京の奥ゆかしさ。昨日の「激生!スポーツTODAY」では、簡単な紹介VTRと「あす、ご・ら・んのチャンネルで」とあっさり告知しただけだったのですが、そのアナウンサーの顔は満面の笑みを浮かべていました。

そして、ネットする三重テレビでも、今朝の「おはよう三重」で、よほど嬉しかったのか、なぜか中日スポーツのテレビ欄を映し、「今夜の日本シリーズ、なんと三重テレビで放送します」と、パーソナリティも驚きの様子で告知していました。

三重テレビで日本シリーズが放送されるのが、初めてなのか、何年ぶりなのかはわかりませんが、普段、三重テレビのプロ野球中継には「字幕スーパースポンサー」がついています。点数表示や、ホームラン表示に「ホームラン!ステーキハウス三松」「中日3×ヤクルト2 永田や仏壇店」「ホームラン!おいしさは愛・井村屋」と、広告スーパーをのっけるのです。

今夜の日本シリーズまさか、まさか。

「ダイエー日本一!マスプロ電工」
「阪神日本一!東建コーポレーション」

なんてことになるのでしょうか…。(多分テレビ東京の一括セールスなので無いと思いますが…)

コメントはこちらから

Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました