写真:AMラジオの番組をFMでも放送している北日本放送
第1号の予備免許交付
このブログでは以前から取り上げております、AMラジオ局によるFM電波での同時放送。
「AMラジオがFMでも聞けるように・周波数割当へ(2014.2.1)」
その予備免許の第1号が先週交付されました。AMラジオといいますと、特に夜間は電波が遠くまで飛ぶことと、消費電力の低いラジオで受信できるというメリットがありますが、一方で都市雑音に弱く、もともと音質が良くないのに加えて、パソコンなどのノイズ発生源近くではマトモに聞けないことが多くなっており対応が求められていました。
地上アナログテレビ放送が終了し、周波数に空きが出たこともあり、AMラジオ局はその空いた周波数を使って、音質の良いFMでも並行して放送をしたいと監督官庁に要望します。「FM補完中継局」です。災害対策などの観点からも利点は多く、AMラジオ局にとってはメリットばかりなのですが、面白くないのが既存のFM局です。
AMラジオ局のほうがもともと優遇されてるのに…
以前の記事にも書きましたが、AMラジオ局というのは「広域放送」が認められており、東京・名古屋・大阪の日本三大都市圏には、複数の都府県をカバーする放送局があります。それに対して、FMラジオ局は基本的に県域放送であり、過疎地域の特例を除いては複数県のカバーは認められていません。
そのため、たとえば東京を見ますと、AMラジオ局のTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送の3局は「1都6県」が放送対象区域であるのに対して、FMラジオ局のTOKYO FM、J-WAVEは東京都のみが放送対象区域となっています。これは名古屋も同様で、AMラジオ局のCBCラジオと東海ラジオは愛知、三重、岐阜の東海3県が放送対象区域であるのに対して、FMラジオ局のFM愛知とZIP-FMは愛知県のみを放送対象区域とする放送局となっています。
このように、もともとFMラジオ局というのはAMラジオ局に比べて、エリアが狭く設定されており、営業上不利なのですが、それに加えて、AMラジオ局がFM「でも」電波を出すとなれば、文句を言いたくなるのはわかります。
総務省はパブリックコメントの手続を行い、ざっくりいいますと。
・AMラジオ局によるFM補完中継局はあくまでも同時放送で別番組は認めない
・基幹局(高出力局)は90~94.9MHzとしてあらかじめ周波数を割り当てる
・広域AM局であってもFM補完中継局は、その県にある既存FM局よりも良い条件を認めない
こういったことが話し合われ、申請の受付を開始しました。
これまでにもあったことはあった
さてこの、AMラジオ局をFMで同時放送するという方法は、実はこれまでにも行われていた地域があります。それは「外国電波の混信による難聴取」が発生している場合という特例です。
富山県のAMラジオ局・北日本放送(KNBラジオ)は、AM738KHzにて富山から5kW、高岡から1kWで放送していたのですが、外国からの電波の混信が激しく夜間は聞こえない地域が多くありました。その対策として、1987(S62)年からテレビの1chの副音声を使ってAMラジオの同時放送を行っていたのですが、テレビがステレオ放送になると副音声が使えないなどの問題があり、1991(H3)年、特例としてFMでのAMラジオの同時放送が認められ、新川局FM 80.1MHz50WのFM中継局が開局、その後、砺波局も10Wで開局し、AMラジオのFM同時放送を行っています。出力は50Wと10Wですが、比較的電波の好く飛ぶ場所に送信所があり、ほぼ全県をFMでもカバーしています。
その後、外国放送の混信対策としてのFM中継局は沖縄県でも開局し、沖縄県では琉球放送(RBCiラジオ)とラジオ沖縄の中継局は全てFM、NHKも沖縄県内3地区でAMラジオをFMでも流しています。
ただ、これらはあくまでも特例であって、今回の新制度「FM補完中継局」とは別物です。新制度のFM補完中継局のうち、既存FM局の親局相当の高出力のものは、「(AMラジオの)親局の放送局のうち受信障害の発生している地域」「災害対策発生時において中波(AMラジオ)放送の継続が困難となるおそれのある地域」を補完するものであることが条件で、なおかつ、出力は既存FM局を上限に最小限となっています。
「FM補完中継局」はステレオ!
そして、その第1号となる予備免許が16日に交付されました。
鹿児島県のAMラジオ局、南日本放送(MBCラジオ)に対してです。
「MBC鹿児島FM」
周波数92.8MHz、出力1kW、最大実効輻射電力(ERP)3.45kW
本放送開始予定日:平成27年3月頃
電波の型式:F8E
FM補完中継局に予備免許-災害対策用FM補完中継局として、全国初の予備免許-
本放送の開始が、来年3月頃となっています。今年の年頭に、名古屋のAMラジオ局・東海ラジオが新聞紙上で「来年4月にはFMでも放送を開始の予定」と公言していたので、ほぼスケジュールどおりに進んでいることになります。既存のFM局であるFM鹿児島(μFM)の本局が出力1kW、ERP3.8kWですから、ちゃんと同等またはそれを下回るものになっていますね。
やはり、コールサインの付与はありませんでした。コールサインは、独実の番組を放送する際に必要になるものですが、あくまでのFM補完中継局は中継局であり、別番組を放送することは認められませんから、JOCF-FMといった独立したコールサインの付与はないということですね。
注目は、電波の型式「F8E」です。
これまであった、外国語混信対策による特例の中継局は、北日本放送、琉球放送、ラジオ沖縄、そしてNHK第1・第2ともに、AMラジオがステレオ放送を行っていなかったことから、FM中継局の電波の型式は「F3E」で免許交付されており、モノラル放送となっていました。
F3E=周波数変調、単一チャンネル、電話(音声)
それに対して、MBC鹿児島FMの電波の型式は「F8E」
F8E=周波数変調、2つ以上のチャンネル、電話(音声)
南日本放送のAMラジオはモノラル放送です。にもかかわらず、FM補完中継局の予備免許はステレオになっているのです。
ということは、設備の問題で実際に番組すべててがステレオになるかどうかは別にして、AMラジオでステレオ放送を行っていないラジオ局でも、申請すれば、FM補完中継局ではステレオで免許が付与されるというわけです。
東京のAMラジオ局3局は、既に申請を行っているということですし、来年春には全国各地で、AMラジオ局がFMステレオのクリアな音声で聞けるようになるかもしれませんね。
ただし。全て90~94.9MHzという周波数ですので、かつてのアナログテレビ1~3チャンネルの音声が聞こえるラジオか、外国のFMラジオがないと聞けませんね。特にカーナビ、カーラジオの対応は難しいでしょうね…。
まさかこの時代に、コンバーターなんてものが登場したりする?
なお、この「FM補完中継局」制度は、受信障害が発生しているかどうか、災害対策として必要かどうかに加えて、導入はあくまでも放送局の判断で任意であるため、お近くのAMラジオ局にやる気がなければまず実現しませんので、「○○ラジオもFMステレオで聞けるようになるの!?」というぬか喜びは禁物です。
ちなみにこの地方では、CBCラジオ、東海ラジオ、ぎふチャンラジオともに実施の方向で検討しているという報道が以前、新聞紙上でありました。来春には、その3局もFMステレオで聞けるようになってるかもしれませんね。
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108MHzまで聞けるラジオが必要です。
コメント
北日本放送は全富山県民(110万人と称していますが、実際にはもう少し少ないはずです?)にラジオに出てもらおうというキャンペーン(?)をしていますが、ラジオ出演でもらえるラジオが108MHzまで聞こえるラジオのようです。(あなたとKNB【番組審議会の番組】で実際に配っているのが放送されました。)
北日本放送がそのようなラジオを配っているということはFM補完中継局開局への準備が進んでいるのかなと思います。
あとは北陸放送が奥能登地域向けに放送したら良いのではないかと思います。(能登町や穴水町で北日本放送を聞いている人たちがいます。【北陸放送と新潟放送の周波数が近すぎて混信するのかも?】)
>ねこでん(@nekoden)さま コメントありがとうございます
AMラジオ局のなかでは、申請する・しないはもう決まってるでしょうし、
そういう動きがあるということは、KNBはさらにFM補完中継局も
実施する方向なのでしょうね。ただその場合でも、
既存の外国混信対策FM中継局は並行しそうですね。周波数の問題もありますし。
まずは基幹局からでしょうね。どうなんでしょう、地方ラジオ局が、
果たして補完FM中継局を自力で複数建てられるかどうか…
そのあたりは国の制度にも絡んできそうですね。
http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/press/26/0902ho.html
東京のAMラジオ3局にも予備免許が交付されました。
ご覧の通り、送信所は東京スカイツリーです。
これはかなりいい環境で受信できそうです。
もしかして、NHKのあるところに設けるということになるのでしょうか?
そうであれば、ラジオ日本は大山(伊勢原・厚木)のFMヨコハマではなく、横浜のNHK横浜FMということになります。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20140903_665077.html
なお、いずれも、AMをやめるつもりはないとのことだそうです。
ニッポン放送では現在対応している機種も紹介しています。
http://www.rnb.co.jp/node/55350/index.html
こちらの局は既に実験しているようです。
>なっちっちさま コメントありがとうございます
東京のAMラジオ3局への予備免許ですが、
実際の電波の強さであるERPが発表されていなかったり、
各局のサイトにあるエリア図がイメージ図だったりと、
まだ、最終的な折り合いがついていないのではないかと
邪推してしまいます。
送信所についてですが、先に予備免許が出ています、
鹿児島の南日本放送のMBC鹿児島FMは、
NHK-FMの城山とは違い、紫原から出すことになっていますので、
NHKの送信所との関係性は無いと考えた方がいいと思いますよ。
お返事ありがとうございます。
そうですか、NHKの送信所との関係性は無いとみてよろしいんですね。
確かに東京の3局は他に詳しい内容が出ていませんね。
それに、電波の型式もまだ発表されていませんし。
まぁ、たぶん「F8E」だろうと思いますけどね。
追記
東京の3局が先行のFM局と条件が同じであれば、ERPは57kWになります。
エリア図もこちらと同じになりましょうか。
http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/if/press/p22/p2302/p230204h.pdf
>なっちっちさま コメントありがとうございます
普通なら予備免許交付時に発表される内容が、
出ていないのが本当に気になるところですね。発表が待ち遠しいです。
コンポも対応機種発売となります。
FM補完が決まってからでは初めてですね。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20140924_668156.html
http://www.phileweb.com/news/d-av/201409/24/35623.html