サークルK
鎖国状態だった名古屋のコンビニ市場
名古屋を発祥とするコンビニエンスストア「ココストア」と「サークルK」が、ともに消滅することになりました。なぜ同じタイミングでこの2つは消滅することになってしまったのでしょうか。
ココストアとサークルK、その歴史を紐解くと、この2つで名古屋のコンビニ市場はほぼ独占されていた時代が長く続いたことがわかります。そう、名古屋のコンビニ市場は十数年前まで「鎖国」と言ってもいい状態が続いていました。その市場のなかで、ココストアとサークルKは棲み分けをすることで両者ともに順風満帆だったのです。
まずは、「日本初」のコンビニエンスストアであり、十数年前まで圧倒的な存在感を示していた「ココストア」から見てみましょう。
ココストアは日本初のコンビニだった
ココストアの成り立ちについては、愛知県春日井市の1号店を振り返った記事がありますので、詳しくはこちらに書いていますが…。
要約しますと、ココストアは1971(S46)年7月11日に自称「日本初のコンビニエンスストア」として開店。「個人商店の酒屋さんを何とかしなければ」と、酒造メーカーがアメリカのセブンイレブンを視察し、取り入れてオープン。7月11日に開店したのは、きっとあやかるためだったのでしょう。
当時、お酒の販売は免許制だったため、新規開店するコンビニではお酒が販売できなかった一方で、ココストアは個人酒店の転換だったため、お酒を販売できることが強みとなり、愛知県ではシェア2位を誇りました。
しかし、2001(H13)年になると、規制緩和によりお酒の距離基準による販売免許制が撤廃。どのコンビニでもお酒が販売できるようになったことで、ココストアは一気にシェアを失ってしまうのです。
名古屋のコンビニの歴史
日本初のコンビニとしてココストアが誕生して以降、名古屋圏ではどのようにコンビニが出店していったのかといいますと…。
・1971.7 ココストア開業
・1978.7 サンチェーンが名古屋1号店開店
・1980.3 サークルK1号店開店(ユニー)
・1980.6 ローソンが名古屋1号店開店
・1985.4 中部ファミリーマート設立、FC展開開始
最初に進出してきたのはサンチェーンでした。サンチェーンは店内放送を音楽だけでなく、「サンチェーン放送局」として独自番組を初めて流すなど、革新的なコンビニで、のちにローソンと合併し、現在も「ローソン・CSほっとステーション」としてその伝統は続いています。
ココストアとサンチェーンが店舗を増やしていたところに、地元流通小売の雄であるユニーが、サークルKを大きく展開していくわけです。
サークルKの強力ドミナント
他の大手コンビニチェーンが全国に薄く広がっていったなかで、ユニーはこの地方が地盤ですから、出店地域を限定したいわゆる「ドミナント戦略」をとる形で、地元に一気に展開。愛知県でシェア1位へと上り詰めます。
逆に、1974(S49)年に1号店を東京にオープンしたセブンイレブンも、同様にドミナント戦略をとったため、サークルKが圧倒的に強い東海3県には一切進出することはありませんでした。そのため、かつてテレビ東京の1月2日に放送されていた「セブンイレブン12時間超ワイドドラマ」も、名古屋ではセブンイレブンのCMは一切流れず、テレビ愛知が集めたであろうローカルスポンサーがずらりと並んでいました。
その環境下で、サークルKは安定した日々を過ごしていました。そう、あの日までは。
21世紀の幕開けは名古屋コンビニ鎖国の崩壊だった
2001(H13)年。このとき、愛知県のコンビニ店舗数シェアはサークルKが1位、ココストアが2位でした。超ドミナント戦略のサークルKがトップで、お酒を売れる強みのあったココストアが2位。お互いに色の違うコンビニとして、この地域発祥のツートップが、シェアを分け合っていました。
先述のとおり、この年、お酒の販売免許制が撤廃されたことで、他のコンビニでもお酒が販売されるようになり、ココストアのアドバンテージは失われます。
そしてその翌年の2002(H14)年、とうとうセブンイレブンが愛知・名古屋に進出。一気に展開します。そう、ココストアがアドバンテージを失ったタイミングでの進出だったのです。
セブンイレブンの進出の勢いはすさまじく、当初から名古屋の企業と共同開発した「名古屋迎合商品」を次々と投下し、よそものは受け入れないという土壌のある名古屋っ子のハートを次々と掴んでいきます。
危機感を感じたサークルKは、2004(H16)年にサンクスと合併。店舗名はそのままにしつつも、合併によるスケールメリットを出し、全国区コンビニへの階段を、遅まきながら登り始めたのです。
開国から14年…
セブンイレブンが名古屋にやってきてから14年。かつて愛知県2位の店舗数を誇ったココストアは6位に。サークルKは1位を維持しているものの、客単価で他のコンビニチェーンに大きく水をあけられました。
結局、ココストアもサークルKも、ファミリーマートに吸収されることになりました。
ココストアは2015(H27)年12月から1年かけて店名をファミリーマートに転換
※報道によると東海地区は全店
サークルKは2016(H28)年から3年かけて全店名をファミリーマートに転換
名古屋発祥のコンビニツートップは、ともにファミリーマートになり、「名古屋のコンビニ」は無くなります。
さらに、サークルKだけでなく、ユニー自体もファミリーマートに飲み込まれ、アピタ・ピアゴは事実上、ファミリーマート傘下のスーパーという形になります。
かつては東海地区で圧倒的な強さを誇った、サークルKとココストア。セブンイレブンがいなかったから?お酒販売が独占だったから?いや、それぞれに魅力もあったはず?新たなファミリーマートに、そのサークルKとココストアの魅力が引き継がれることを願いつつ…。
名古屋の街並みから、まもなく、サークルK、ココストアの看板は失われます。名古屋の風景そのものが大きく変わることでしょう。
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